山口勝平の“キザ”キャラの魅力とは? 『らんま1/2』と『ジャンプ』作品との比較から考察

山口勝平の“キザ”キャラの魅力とは?

 10月5日より日本テレビ系にて放送中のアニメ『らんま1/2』。本作の制作発表時、SNSなどで大きな話題を呼んだのはメインキャストの多くが1989年から1992年にかけて放送されたオリジナルバージョンより続投している点であるが、同時にその続投しているキャストの大半が『名探偵コナン』にも出演している点にも注目が集まった。『コナン』と共に育ってきた世代である筆者にとって、『らんま1/2』は生まれる前に放送されていた作品である。『らんま』と『コナン』におけるキャストの共通性については改めて驚かされた。

 『らんま1/2』の各キャストを振り返ると、早乙女乱馬役の山口勝平、らんま役の林原めぐみ、天道あかね役の日高のり子、天道なびき役の高山みなみといったキャストが『コナン』と共通している。『コナン』において山口勝平は工藤新一/怪盗キッド役を、林原めぐみは灰原哀役を、日高のりこは世良真純役を、そして高山みなみは江戸川コナン役を演じている。

 特に本稿において注目したいのは、主人公である早乙女乱馬を演じる山口勝平だ。『コナン』における“高校生探偵”工藤新一というキャラクターは、頭脳派かつキザでクールな二枚目という側面が前面化しており、山口勝平の演技もそうした面を一層強調したものとなっている。他方、早乙女乱馬は幼少の頃から無差別格闘流の修行に励む高校生であり、“武闘派”という意味では工藤新一とは大きく対を成すキャラクターだ。この乱馬/新一の対照性、つまり『らんま』と『コナン』の対照性は、同じくキャストを共有している他のキャラクターにも通じるものがある。

 林原めぐみ演じるらんまは、少女の見かけながらその中身が乱馬であることから強く少年・青年性を感じさせるキャラクターであり、その幼い男性性が少女の姿で表出することで見る者に天真爛漫さを感じさせる。一方で同じ林原めぐみの演じる灰原哀は『コナン』における最大の敵である黒の組織から逃げ出した科学者というキャラクターであり、ミステリアスさや大人びた側面が強調されたキャラクターだ。天真爛漫ならんまとミステリアスな灰原という対照性が林原めぐみの起用の在り方にも表れている。『コナン』でも馴染み深い声がたくさん聞こえてくる『らんま』でありながら、それぞれのキャラクターは極めて対照的なのだ。

 「水をかぶると女になってしまう男」のラブコメがストーリーの基調である『らんま』において、早乙女乱馬はコメディリリーフ的な側面も持つキャラクターだ。そういう意味では山口勝平の代表作でいえば『ONE PIECE』におけるウソップのほうが近い存在かもしれない。そして工藤新一と早乙女乱馬の中間的な存在としては、新一と同じく『コナン』のキャラクターである怪盗キッドが思い浮かぶ。登場初期こそキザでクールな性格であったものの、回を追うごとにコメディリリーフ性が強調されていったキャラクターだ。

 こうして山口の代表作を並べてみると、彼は常にキャラクターのコメディ性とキザ性のグラデーションの中でバランスを取ってきた声優だと言える。

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