『君の花になる』山下幸輝演じる宝の葛藤　8LOOMが見せた揺らぐことのない“7人の絆”

　今回は宝と共にもう1人、その存在感が光ったのが、8LOOMのなかで宝と特に仲のいい竜星だった。なんでも器用にこなす天才肌の竜星と、一生懸命で努力家な宝。一見すると正反対な2人だけれど、そんなお互いにない部分を持つ人にこそ惹きつけられるというもの。

　誰よりも竜星のいいところを宝が知っているように、竜星もまた宝のいいところをたくさん知っている。そして、宝がメンバーを誇りに思うように、メンバーもまた宝の存在がどれだけ大切なのかをノートにしたためるのだ。そのノートを見て、思わず感情が溢れ出てしまった宝のナチュラルな涙に胸が熱くなった。

　また、ハッとさせられたのが竜星の言葉だ。怪我をしてしまって申し訳ない宝と、そんな宝に気づけなかった自分を責める弾に「いくら本人でも（自分をダメダメだという）悪口は許さない」と、止める。

　自分で自分の悪口を言うこと。それは、自分の良さを知ってくれている人に対して、悲しい思いをさせてしまうのだと考えさせられた。“自分なんて”と言いたくなったとき、この竜星の言葉をぜひ思い出したい。

　そして全員で話し合った結果、ライブ当日は座ったままパフォーマンスをすることにした8LOOM。ライブの最初に宝が“自分が怪我をしてしまったせいだ”と話したのも、むしろよかったと思う。ファンにキレキレのダンスの代わりに、揺らぐことのない“7人の絆”を見せることができたのだから。

　そして運命の配信ランキング発表の日。あす花は祈る思いでスマホの画面をスクロールして結果を確認する。20位、10位、5位……と、まだ8LOOMの名前が出てこないでと願いながら。しかし、3位に見えた“8LOOM「Melody」”の文字。ああ、やっぱりそんなにうまくいくわけないか……なんて思っていたら、なんと1位に8LOOMの「Come Again」がランクイン。3年越しにまさかのデビュー曲が返り咲くというミラクルが起きたのだ。

　しかし、ここで「よかったよかった」では終わらない。だって、まだドラマは5話。そしてヒロインであるはずのあす花は、根っこの部分ではまだ何も変わっていないのだから。8LOOMを応援するという夢を持ち、彼らと目標を共にすることで生き生きと毎日を過ごしているかのように見えるが、教師をやめてしまったあの日から、ずっと同じところで顔を伏せているように見える。

　いくら香坂に「あなたがうらやましいです」と言われても、それをどこか他人事のように受け流してしまう。それは心がつまずいたまま、本当の意味で自分のことを認めることができないでいるからだろう。

　嫉妬したり、羨ましいと思えるのは、それだけ自分を信じることができる証拠。そう言うあす花のもとへ、ランキングの喜びを分かち合おうと弾が駆けつける。するとそこに奈緒（志田彩良）がやってきて、抱きつくのを見たあす花は思わず心がざわつくのを感じた。これは、弾に対する恋心だろうか。それとも自分自身を好きになり始めている証拠なのか。

　そして予告編を見ると叫ぶ有起哉に、歯を食いしばって涙を流す栄治の姿も映し出される。彼らの心もどこかでつまずいたまま、本当の意味で立ち上がっていないのかもしれない。生きていれば誰もが自分を嫌いになることがあって、そのたびに誰かのおかげで自分を好きになることができる。あす花も、8LOOMメンバーも、そしてこのドラマを観るすべての人の心に花が咲くように。来週もそんなミラクルが待っていると信じて、楽しみにしている。

■放送情報
火曜ドラマ『君の花になる』
TBS系にて、毎週火曜22:00～22:57放送
出演：本田翼、高橋文哉、宮世琉弥、綱啓永、八村倫太郎、森愁斗、NOA、山下幸輝、志田彩良、菊田竜大（ハナコ）、川津明日香、木南晴夏、宮野真守、内田有紀、竹中直人、夏木マリ
脚本：吉田恵里香
プロデューサー：黎景怡、宮﨑真佐子
演出：坪井敏雄、加藤尚樹、宮崎陽平
製作著作：TBS
©︎TBS
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