山田涼介の狂気とかわいさが共存 『親愛なる僕へ殺意をこめて』で堪能するその演技力

山田涼介の演技力を堪能できる『しんぼく』

 フジテレビ系で放送中のドラマ『親愛なる僕へ殺意をこめて』で主演を務めるHey! Say! JUMPの山田涼介。今作で二重人格を演じ分け、改めて演技力の高さが評価されている。

 本作で山田が演じるのは、明京大学2年生の浦島エイジ。「人生楽しんだもの勝ち。楽しければそれでいい」と、仲間たちと楽しい大学生活を送っている一見普通の大学生だ。ただ、彼は闇を抱えていて、実の父親が15年前に自殺した連続猟奇殺人事件「LL事件」の容疑者・八野衣真(早乙女太一)。加害者遺族として悲惨な人生を耐え抜いて来たエイジは周囲にその事実を隠し、現実をごまかそうと無理に笑顔を作っていた。

 また、自分の記憶が数日飛んでいたことや、半グレ集団のリーダー・佐井社(尾上松也)などの周りの声から、自分が二重人格者という事実を知る。もう一人の人格、B一(びーいち)こと八野衣エイジ(以下、B一)は、冷静で喧嘩が強いエイジと真逆のタイプで、父の免罪を信じて15年間独自に調査を続けている。

 第6話の放送で分かったのは、実はB一がオリジナルの人格で、父親が殺人者になって以来、周りからイジメやバッシングの苦しみから生まれたのが、浦島エイジの人格だということ。B一曰く「俺の代わりに苦痛を受けるためだけに生まれてきた」存在で、「弱くて頭も悪いただの腰抜け。俺にとって無駄なものが寄せ集められたガラクタ」と、いずれ消滅してもらうと言う。

 気弱と気丈、正気と狂気といった対照的な二重人格は、山田の役に対するストイックさと、アイドルとしてのかわいらしさ、色気が共存しているからこそできる役だといえる。

 好青年で気弱なエイジは、自分の知らない所でB一が犯罪をしているのではないかという不安や、半グレ集団のバイオレンスな世界に放り込まれ、とにかく怯える姿が印象的だ。普通の人なら当然こうなるだろうというリアクションで、ごく普通の大学生の戸惑いを表現している。拷問シーンも徹底して泣き叫び、ひたすら苦悶の表情を見せ、恐怖と不安を感じさせるリアルな演技を見せている。

 この弱さや同情を誘う演技は、29歳という年齢を感じさせない山田のかわいらしい容姿がなせる技だ。若い頃は二次元のキャラクターを実写化したような役が多かったが、最近、ドラマ『俺の可愛いはもうすぐ消費期限!?』(テレビ朝日系)で等身大のコメディを経験したキャリアも生かされているように思う。

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