『舞いあがれ!』高橋克典が体現するロマンと哀愁 福原遥との共演は『正直不動産』でも
ヒロイン・舞(福原遥)がパイロットとして人力飛行機・スワン号のテスト飛行に無事成功した朝ドラ『舞いあがれ!』(NHK総合)。時を同じくして、父・浩太(高橋克典)は自身の父親から引き継いだ岩倉螺子製作所を株式会社IWAKURAに生まれ変わらせ、「ゆくゆくは飛行機にうちの部品を載せたいと思います」と全社員の前でスピーチしていたが、この浩太の“小さなネジの、大きな夢”が思いの外早くに叶えられそうだ。
父親・浩太役を演じる高橋克典は、本作が朝ドラ初出演。浩太自身も結婚前は重工メーカーに勤務し、飛行機を製作する夢を抱いていたが、父親が病死したため退職し工場を継いだのだった。幼い頃、舞が飛行機好きだとわかるなり嬉しそうな表情を滲ませ、工場の経営に行き詰まった際にも舞を通して自分自身の夢を思い出し、“まだ頑張れる”と腐らず再起を誓っていた姿が印象的だった。舞が大学生になり出会った人力飛行機サークルについて食卓で話すと、身を乗り出してその製作方法などについて質問していたのも微笑ましかった。
高橋と言えば、やはりイメージが強いのが『サラリーマン金太郎』シリーズ(TBS系)での主人公・矢島金太郎役や、『特命係長 只野仁』シリーズ(テレビ朝日系)での主人公・只野仁役、『課長島耕作』(日本テレビ系)での主人公・島耕作役と、人気漫画が原作のスーパーサラリーマン役だろう。特に金太郎は元暴走族出身、只野はミスばかり連発するパッとしない社員という昼の顔と、やけにバスローブ姿が似合う会長直属の特命係長という夜の顔というギャップある2つの顔を持ち合わせる役だった。また只野役では鍛え上げられた肉体美とアクションシーンが目を引く。
高橋はロマンと共にその隣り合わせにある哀愁を添えるのが非常に巧みで、あの知的ながらも清濁併せ呑み、酸いも甘いも知ったかのような表情の中に一瞬で光だけでなくその裏に付きまとう影も含ませる。それが自身のポリシーと任務(会社からの命令)の間で揺れ動き葛藤するビジネスマンという板挟みの存在をよりドラマチックに描いてくれる。
大河ドラマ『麒麟がくる』(NHK総合)では、織田信長(染谷将太)の父・織田信秀役を熱演していたのも記憶に新しい。人生の最終章に突入し体調も優れず不運続きながら最期まで息子の前では父親であろうと気丈に振る舞おうとする信秀の悲哀のようなものが感じられた。