松坂慶子の“桐子さん”をいつまでも胸に 『一橋桐子の犯罪日記』が描いた“自由”の喜び
娑婆にあって、刑務所にはないもの。それは“自由”だ。いつでも好きな場所に行けて、いつでも好きな人に会える。でもその素晴らしさがときに霞んでしまうほど、この世界で生きていくのは厳しい。いつだって、塀の向こうから甘い囁きが聴こえてくる。だからこそ、「あなたは一人じゃないよ」と自分を引き留めてくれる誰かが必要なのかもしれない。
そして、その誰かがいてくれれば、一人でも生きていける。桐子が誰一人として知り合いのいない知子の故郷で笑って生きていけるのは、遠く離れていても互いの幸せを願い合える雪菜や久遠、寺田の存在が彼女を支えているからだ。
今、先の見えない世界で誰もが心の中に「どうやって生きていけばいいんだろう」と不安に思う“桐子”を抱えている。「生きていけない」「私には無理よ」と泣き出してしまいそうな時もある。だけど目を凝らせば、ここで生きていくために必要なものはすでに備わっているのかもしれない。たとえ今はなくとも、桐子のように新たな扉を開けば、私にとって、あなたにとっての知子や雪菜たちにきっと出会える。『一橋桐子の犯罪日記』はそんな希望を与えてくれた。
「秋桜が好きよ自由に生きるから」
いろんな場所に花を咲かせる秋桜のように自由を謳歌する桐子の、私たちの物語はこれからも続いていく。
■配信情報
土曜ドラマ『一橋桐子の犯罪日記』
NHK+、NHKオンデマンドにて配信中
出演:松坂慶子、岩田剛典、長澤樹、片桐はいり、宇崎竜童、木村多江、由紀さおり、草刈正雄ほか
原作:原田ひ香『一橋桐子(76)の犯罪日記』
脚本:ふじきみつ彦
音楽:長谷川智樹
制作統括:高橋練(NHKエンタープライズ)、清水拓哉(NHK)
プロデューサー:宇佐川隆史(NHKエンタープライズ)
演出:笠浦友愛、黛りんたろう、加地源一郎
写真提供=NHK