『RRR』世界的ヒットを機に“インド映画”への誤解を解く 言語による作風の違いとは
すでに他国に出しても恥ずかしくない映画、世界市場を見越した映画作りが主流となり、『ムトゥ 踊るマハラジャ』(1995年)や『きっと、うまくいく』(2009年)といった作品が定着させてしまった、ステレオタイプな「歌って、踊る」というフォーマットも解体されはじめている。そのため、ミュージカル、コメディ、サスペンス、アクションといった多ジャンルをごった煮したもの、つまりお祭り感覚で制作されてきた「マサラ映画」というジャンル自体が逆になくなってきているのだ。
こういった流れは2000年代から徐々にあったのが、近年ではそれがわかりやすく実感できるほどになってきて、より「インド映画」と一括りにできる産業ではなくなってきている。
実際に『RRR』にダンスシーンは「ナートゥ・ナートゥ」とエンディングの2つしかなく、決して「歌って、踊る」映画ではない。「マサラ映画」でもない。イギリス植民地時代に活躍した革命家をモデルとした歴史スペクタクルであり、ぶっ飛んだ部分もあるが、基礎のストーリーがしっかりしている。
それぞれの言語作品によって、質やトレンドも違うのだから、それらをまとめて「インド映画」としてしまうことは、日本と中国と韓国映画をまとめて日中韓映画と言っているのと同じようなこと。当然ながら日本も中国も韓国も、映画のテイストは全然違うはず。インドはそれがひとつの国で起きているのだ。
“興味深い発展”という言葉が適切かはわからないが、こんな面白いほどにエンタメが急成長している国は他にない。『RRR』の世界的ヒットは、今後のインド映画産業としては、まだ始まりにすぎない。
参照
※ https://www.cbfcindia.gov.in/main/CBFC_English/Attachments/AR_2016-17_English.pdf
■公開情報
『RRR』
全国公開中
監督・脚本:S・S・ラージャマウリ
原案:V・ビジャエーンドラ・プラサード
出演:N・T・ラーマ・ラオ・Jr.、ラーム・チャラン
配給:ツイン
応援:インド大使館
原題:RRR/2021年/インド/テルグ語、英語ほか/シネスコ/5.1ch/日本語字幕:藤井美佳/字幕監修:山田桂子
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