『舞いあがれ!』赤楚衛二が大切に育んだ貴司の内面 優しい雰囲気はお茶の間の癒やしに

『舞いあがれ!』赤楚衛二が育んだ貴司の内面

 NHK朝ドラで気になるのが、ヒロインの異性の幼なじみだ。ヒロインの恋のお相手として真っ先に注目される傾向にあるが、恋愛を抜きにしても魅力的な人物であることが多く、毎回演じる俳優も注目される。

 近年は『スカーレット』の林遣都、『おかえりモネ』の永瀬廉、『カムカムエヴリバディ』の村上虹郎、『ちむどんどん』の前田公輝らがその名演によりインパクトを残した。そして彼らに続くのが、現在放送中の『舞いあがれ!』で舞(福原遥)の幼なじみ・貴司を演じる赤楚衛二だ。まだ出番はそう多くはないが、陽だまりのような優しい雰囲気がすでにお茶の間に癒しを与えている。

 中国最大のソーシャルメディア「微博(Weibo)」で開設したアカウントは20万人近くのフォロワーを獲得。そのほかのSNSへの投稿にも、中国語やベトナム語などで書き込まれたコメントが多く、赤楚はアジア圏全体で高い人気を誇る。その理由の一つが、世界中で注目を集めたテレビ東京の深夜ドラマ『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい』(通称、『チェリまほ』)での好演だ。

 同作は、童貞のまま30歳を迎えたことで、“触れた人の心が読める魔法”を手に入れた安達(赤楚衛二)と、彼に好意を寄せる会社の同期・黒沢(町田啓太)の初々しい恋愛模様を描いたラブコメディ。その前年にはドラマ『ねぇ先生、知らないの?』(MBS)でカリスマ美容師を演じた赤楚だが、イメージをがらりと変え、少し猫背ぎみで悲壮感も漂う冴えないサラリーマンになりきった。

 そこから魔法の力を手に入れ、どんどん広がっていく世界を驚きや戸惑いをもって受け入れる安達をコミカルに表現していった赤楚。否応なく伝わってくる相手の本心に一生懸命寄り添おうとする優しさや、言いたいことをグッと押さえてしまいがちだけれど、その表情から心の声が溢れ出るような素直さは愛おしく、そこに黒沢が安達を好きになった理由があった。魅力たっぷりに安達を演じる赤楚は「社内一のエリートが冴えない同期を好きになる?」という疑問を持つ隙など与えない。

 特に印象に残っているのは、いつも完璧な黒沢が初めて弱みを見せたとき、安達が「なんかいいな」と一言放った場面。その言葉に人知れず黒沢は救われるのだが、当の本人は無理に慰めようとしたわけではない。ちょっとからかうような口調と無邪気な表情から、安達は本心で話しているのだということが伝わってきた。

 赤楚が演じるのは安達を筆頭に、『SUPER RICH』(フジテレビ系)の春野や『石子と羽男ーそんなコトで訴えます?ー』(TBS系)の大庭など、自分の気持ちよりも相手の気持ちを優先してしまう、優しくて誰かを一途に思う役が多い。それが“子犬系男子”として国内外で愛される理由でもあるが、赤楚の場合はそこに嘘がない。自分の見せ場ではないときにこそ、赤楚はしっかりと演技を作り込む役者だ。何かを思いつめているような表情だったり、好きな人に向ける優しい眼差しだったり、それが伏線となって後の行動に繋がる。

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