『舞いあがれ!』キャラクターの奥行きを広げる細やかな演出と台詞の数々 又吉直樹も登場 

『舞いあがれ!』成長する舞の主体性と優しさ

 土曜日、貴司は舞を連れて古本屋「デラシネ」にやってきた。子供だから、少ないお小遣いで買えるように大型書店ではなく街の小さな古本屋に行く、という納得のできる演出が、やはり『舞いあがれ!』には多い。各キャラクターの奥行きを大事にしていることが伝わるディテールがあるからこそ、そのシーンが素朴でも、彼らにとってそれが運命な瞬間であることがわかるのだ。それがまさに、今回の古本屋のシーンである。本を大切に扱わない客には売らない、をモットーにする店主の八木巌(又吉直樹)は、自分で知識を求める子供たちには優しく接する。そんな彼が書いた詩集に、貴司は「思ってたのに言葉にできなかったことを代わりに言ってもらった気がしてスッとする」と感銘を受ける。その感想そのものが、彼が言葉に対して丁寧な姿勢でいるかを表し、それは店主の八木にも響く。

「おっちゃん、あと21年物書き続けたらええで。あと詩集より小説書いたほうがええかも知れん。篤田川賞とった花岡町子みたいに、賞とかもらえる気ぃするわ!」

 花岡町子の「おっと、どっこい」が売られているのが見えた店内。貴司のその言葉は、八木の心も動かすことだろう。舞が模型飛行機の作り方に出会うだけでなく、貴司にとっても彼の人生で大切になりそうなものに出会えたシーンだった。

 しかし、一方で浩太の工場の状況は悪化の一途を辿る。第3週のタイトル「がんばれ!お父ちゃん」という舞の気持ちは、浩太に届くのだろうか。

■放送情報
NHK連続テレビ小説『舞いあがれ!』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
出演:福原遥、横山裕、高橋克典、永作博美、赤楚衛二、山下美月、目黒蓮、長濱ねる、高杉真宙、山口智充、くわばたりえ、又吉直樹、吉谷彩子、鈴木浩介、高畑淳子ほか
作:桑原亮子、嶋田うれ葉、佃良太
音楽:富貴晴美
主題歌:back number 「アイラブユー」
制作統括:熊野律時、管原浩
プロデューサー:上杉忠嗣
演出:田中正、野田雄介、小谷高義、松木健祐ほか
主なロケ予定地:東大阪市、長崎県五島市、新上五島町ほか
写真提供=NHK

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