“原作もの”の名匠・三木孝浩 『セカコイ』『TANG タング』『アキラとあきら』での手腕
さて、今回はいずれも「小説」が原作だが、三木監督の手にかかれば原作となるフォーマットは何でもござれだ。ロックバンド・Galileo Galileiの同名曲をモチーフとした『管制塔』(2011年)、アンジェラ・アキによる国民的ソング「手紙 〜拝啓 十五の君へ〜」を元にした小説の映画化作品『くちびるに歌を』(2015年)。『きみの瞳が問いかけている』は、韓国発のノワール調のラブストーリーである『ただ君だけ』(2011年)をリメイクしたもので、『夏への扉 ―キミのいる未来へ―』(2021年)はロバート・A・ハインラインによる伝説的なSF小説の舞台を日本に移し、見事に映画作品へと昇華させた。そのフィルモグラフィーを振り返れば、「あの映画も三木監督の作品だったんだ!」となることも多いのではないかと思う。
とはいえ、実写映画の“原作もの”に対する不安の声は尽きない。これだけ多彩なキャリアを築いてきた三木監督でさえも、『坂道のアポロン』(2018年)の映画化の報が出た際には懸念する声が溢れたものだった。しかしいざフタを開けてみると、そこにはアニメーションではなし得ない“青春音楽映画”があった。生身の人間の細やかな表情が生み出す情感は、実写作品ならではだ。また、いくつもの若い俳優の才能や新たな一面を発見してきたことも、三木監督の功績として語るべきものがあるだろう。2022年のこの3本の映画で、三木監督の手腕を堪能していただきたい。
■公開情報
『アキラとあきら』
全国東宝系にて公開中
出演:竹内涼真、横浜流星、髙橋海人(King & Prince)、上白石萌歌、児嶋一哉、満島真之介、塚地武雅、宇野祥平、奥田瑛二、石丸幹二、ユースケ・サンタマリア、江口洋介
原作:『アキラとあきら』(池井戸潤著/集英社文庫刊)
監督:三木孝浩
脚本:池田奈津子
企画:WOWOW
制作プロダクション:TOHOスタジオ
配給:東宝
©︎2022「アキラとあきら」製作委員会
公式サイト:https://akira-to-akira-movie.toho.co.jp/