『監察医 朝顔』が描き続ける未来への希望 上野樹里演じる朝顔に再び会えることを願って
家族で揉め事があった時、桑原は必ず話し合いの場を作る。つぐみの代わりはいない、パパとママは先立つから、そばにいるさとちゃん(里美)を大切にしてほしいと。朝顔は平が家族一人ひとりに残したPCにある手紙を開き、父の希望通りに仙の浦にある介護ホームに預けることを決める。
叶えられなかった約束もある中で、平は“ごめんばこ“の続きと、家族旅行を実現することができた。行き先は里子との思い出が詰まった仙の浦。シーズン毎に岩手県陸前高田市で撮影している『監察医 朝顔』は、被災地の今を収めたドキュメンタリー映像の側面も持ち合わせている。本作が続いていく限り、それは震災を風化させない意志となる。震災、そして劇中では描かれてはいないが、現実におけるコロナ禍を経て、希望のシンボルとなったのは七夕祭りだ。色とりどりの山車に、祭囃子、太鼓の音色。平が朝顔に向けた「(ありがとう)」の言葉は太鼓の音にかき消されていく。
そして家族みんなで訪れた海水浴場で、ふと朝顔の前に現れた里子と平。「元気でな」と優しく微笑む平、明るく手を振る里子。印象的なのは、50秒近くを使ってゆっくりと演じる上野樹里を捉えていく贅沢なカメラワーク。朝顔の“夢”とも捉えられるその描写については受け取る側に委ねられているところが大きいが、筆者は朝顔の晴れやかな笑みを見てまた前に進むことを決めたのだと受け止めた。
『監察医 朝顔』が伝えているのは生きることの尊さとそれぞれの幸せの形、そして未来に向けた希望。また朝顔たちの今が描かれることを願って。
■配信情報
『監察医 朝顔2022スペシャル』
FOD・TVerにて配信中
出演:上野樹里、時任三郎、風間俊介、志田未来、中尾明慶、森本慎太郎(SixTONES)、藤原季節、斉藤陽一郎、坂ノ上茜、宮本茉由、加藤柚凪、中村千歳、石田ひかり、戸次重幸、平岩紙、大竹しのぶ(特別出演)、ともさかりえ、三宅弘城、杉本哲太、板尾創路、山口智子ほか
原作:香川まさひと、漫画:木村直巳、監修:佐藤喜宣『監察医 朝顔』(実業之日本社)
脚本:山本奈奈、鈴木薫
音楽:得田真裕
主題歌:折坂悠太「朝顔」「鶫」(Less+ Project.)
法医学監修:上村公一(東京医科歯科大学)
法歯学取材:斉藤久子(千葉大学)、勝村聖子(鶴見大学)
プロデュース:金城綾香
演出:平野眞
制作:フジテレビ ドラマ・映画制作部
©︎フジテレビ
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