『LAMB/ラム』A24が贈る素晴らしき不気味な物語 観客の想像力で“羊”は変容する
そうやって言い切れるのは、本作は説明的な要素を限りなく削ぎ落として構成されているからだ。物語は、視線、表情、音楽、間、そして最低限の台詞だけで進んでいく。それでいて明確なテーマは提示されず、まるで白昼夢のような茫漠とした展開とホラーなシーンが続いていく。本作は一言で言えば「ノーヒント映画」で、観客の想像力によって完成される類の映画だ。
結果として「よく分からない」という感想に尽きてしまうかもしれない。「ホラー映画」を期待していた人は満足できないかもしれない。でも、そうしたテーマありきで考えることを止めて、1つのおとぎ話のような、寓話のようなものとして捉えると、本作はとても含蓄のある映画だと評することができる。観客の数だけ答えが存在する、と言葉にするのは簡単だが、観た人の想像力をここまで刺激できる映画はそれほど多くない。
幕が降りるのを待たずして、「羊、羊、羊。あの羊って結局なんだったんだ?」という思いが去来することだろう。でも、この「分からない」をゆっくり咀嚼して、最大限楽しんでほしい。1番の魅力は、その思考の過程にこそあるのだから(もしくは羊の効能でぐっすり眠れるかもしれない)。
■公開情報
『LAMB/ラム』
新宿ピカデリーほか全国公開中
監督:ヴァルディミール・ヨハンソン
脚本:ショーン、ヴァルディミール・ヨハンソン
製作:フレン・クリスティンスドティア、サラ・ナシム
出演:ノオミ・ラパス、ヒルミル・スナイル・グズナソン、ビョルン・フリーヌル・ハラルドソン
配給:クロックワークス
提供:クロックワークス オディティ・ピクチャーズ
2021年/アイスランド・スウェーデン・ポーランド/カラー/シネスコ/アイスランド語/106分/字幕翻訳:北村広子/R15+
©︎2021 GO TO SHEEP, BLACK SPARK FILM &TV, MADANTS, FILM I VAST, CHIMNEY, RABBIT HOLE ALICJA GRAWON-JAKSIK, HELGI JÓHANNSSON
公式サイト:https://klockworx-v.com/lamb/
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