竜星涼が『ちむどんどん』で徹底したダメ男像 “沖縄”から“お茶の間”の一番星に!
ついにあのニーニーが、“沖縄の一番星”から“お茶の間の一番星”としての輝きを得た。
沖縄出身のヒロインとその周囲の人々の姿を見つめた『ちむどんどん』(NHK総合)。間もなくクライマックスへと向かう同作において悪名高いニーニーだが、ようやく真の意味で家族のため、人々のためとなる功績を残すことに成功した。名誉挽回である。これは演じる竜星涼が、徹底して“ダメ男像”を作り上げてきたからこそのものだろう。
改めてニーニーとは何者なのかを振り返りたい。
“ニーニー”こと比嘉賢秀は、本作のヒロイン・暢子(黒島結菜)の兄であり、彼女のほかに良子(川口春奈)、歌子(上白石萌歌)らを妹に持つ、比嘉家の長男だ。父・賢三(大森南朋)が早くに他界し、母・優子(仲間由紀恵)に女手ひとつで育てられた四兄妹の長男のため頼りになる男かと思いきや、彼の振舞いはつねに人々のひんしゅくを買ってきた。「人々」というのは、比嘉家を取り巻く者たちのことであり、お茶の間にいる視聴者のことである。浅川大治が演じていた幼少期の賢秀はただのワンパク小僧であったが、このワンパクぶりというか、単純さ、純粋さが竜星演じる青年期の賢秀になってからも変わらず、そのいつまで経っても大人になれない子どもじみた言動には、目に余るものがあったのだ。
ニーニーのことを「ダメ男」どころか「クズ」とまで言い捨ててしまう視聴者も多い。ちょっとここ最近の朝ドラの「ダメ男」たちを振り返ってみよう。
前クールに放送された『カムカムエヴリバディ』(NHK総合)の橘算太(濱田岳)はトラブルメーカーであり、記念すべき朝ドラ100作目『なつぞら』(NHK総合)に登場した奥原咲太郎(岡田将生)は情熱的で空回りしがちな男だった。どちらもヒロインの兄であり、愛すべきところも多々あったのは間違いない。いまでは彼らと過ごした日々がいい思い出になっている。しかし、『おちょやん』に登場したヒロインの父・テルヲ(トータス松本)は、「クズ」……としか言いようがない。基本的に“家族より金”な男だった。
彼らの存在と照らし合わせると、ニーニーがもっとも近いのは『なつぞら』の咲太郎だろう。ニーニーも情熱的で空回りしがちであり、“妹思い”なところが共通している。それに、しばしばニーニーが『男はつらいよ』の「寅さん」のようだと指摘されている点も、咲太郎と同じである(『男はつらいよ』ファンとしてパロディの数々に言いたいことはあるが、ここでは控えておく)。しかしニーニーの場合、周囲を不幸に陥れるような反社会的な行為を繰り返してきたのが異なるところ。彼が原因で『ちむどんどん』から脱落してしまった人は多い。理由を聞けば、「腹が立って仕方がない」とのことだ。朝から元気をもらうために朝ドラを視聴している方からすれば当然だろう。
これらの意見には同意だ。しかしながら筆者は、ここまで『ちむどんどん』と日々を過ごしてきた。その一つの理由は、「コイツ、どうしようもねえな……」とあらゆる層の視聴者をお手上げ状態にした、そんなニーニーを演じる竜星涼の凄みである。