小池栄子&MEGUMI、グラビアアイドルから代えのきかない女優へ 共通項は“バランス感覚”
北条政子の女性としての“揺れ”を体現する小池栄子
小池栄子は、勢いや強さ、またエキセントリックさを発揮できる役がよく似合う。活動開始は1998年、女優としての転機は2008年公開の『接吻』だ。豊川悦司演じる、一家殺害事件によって服役した男と文通を続け、獄中結婚を果たす狂気的な役柄を演じきる。それまで強かったバラドルとしてのイメージを一新する、堂々たる演技だった。
『八日目の蟬』(2011年)で演じたルポライター役では孤独感をにじませ、繊細な芝居を見せた。そして『リーガル・ハイ』シリーズ(フジテレビ系)の秘書役で人気を博す。スーツをビシっと着こなし、女性的魅力を捨てるのではなく十分に備えつつ、社会のなかで自身の力を発揮する姿に、主人公たちと対立する立場ながら惚れ惚れさせられた。芸達者な役者たちとのやりとりが抜群にうまい小池の、生瀬勝久との相性の良さも好評だった。一方『美食探偵 明智五郎』(日本テレビ系)のマグダラのマリアのような、笑いのない、危険で妖艶な役柄もきっちりこなす存在感も増している。かと思えばドラマ『俺の話は長い』(日本テレビ系)、『姉ちゃんの恋人』(カンテレ・フジテレビ系)、映画『私はいったい、何と闘っているのか』といった日常生活と地続きの役柄も魅力的だ。
今は『競争の番人』(フジテレビ系)に出演中。チームの潤滑油的役割を担い、頼れる同僚としての魅力を見せてきた本作も佳境に入った。公正取引委員会を舞台にした新しい切り口のドラマは、果たしてどう着地するのか。
そして現在地の小池を語るうえで外せないのは、なんといっても大河ドラマ『鎌倉殿の13人』(NHK総合)における北条政子である。尼将軍・政子を小池が演じると発表されるや、小池の持つ迫力や強さが「絶対合う!」とスタート前から期待の声が上がった。おまけに映画『グッドバイ~嘘からはじまる人生喜劇~』でも息ぴったりだった大泉洋演じる頼朝とのタッグである。蓋を開けると、想像以上の政子がいた。当初期待された「怖い」政子ではなく、政治もわからぬままに鎌倉殿の正室、御台所となった、ひとりの女性としての“揺れ”が幾重にも滲む政子。
もちろん時に周囲を叱咤激励する強さの片りんは見せているが、亀の前事件で動揺し、源義高の命を助けるよう懇願し、大姫や頼朝を身を削って看病するなど、目に涙をため、慈愛にあふれた、新鮮な政子像となっている。そして頼朝崩御の際、とめどなく流れた大粒の涙に、女優としての真価を見た。なにより、こちらの感情をわしづかみにされた。後半戦、鎌倉の権力争いが激しさを増している。いよいよ、かねてより期待の「強い」政子が登場してくるはずだが、歴史をなぞりながらも、さまざまに想像を刺激し、“物語”として成立させてきている三谷幸喜版の、そして小池栄子だからこその政子は、いい意味でまた裏切ってくれるはず。期待しかない。
芸歴20年を超え、評価も申し分ないふたり。瞳の奥の温度感が、周囲の空気より少しだけ低いと感じさせるMEGUMIと、少しだけ高いと感じさせる小池栄子。そのほんの少しの周囲との差が、強固な個性となり、魅力を増幅させている。そしてコメディであれ、シリアスであれ、俳優として立つ彼女たちの最大の共通項は、そのバランス感覚だ。放たれる強い個性は、しかし決して悪目立ちせず、あくまでも作品をよりよくするために発揮されている。いまだに若い女優に目が行きがちな日本の映像界だが、MEGUMIと小池栄子が、それぞれに独立した輝きを放つ柱となり、これからもさまざまな役で魅了してくれると確信している。
■放送情報
『競争の番人』
フジテレビ系にて、毎週月曜21:00~21:54放送
出演:坂口健太郎、杏、小池栄子、大倉孝二、加藤清史郎、寺島しのぶ、小日向文世ほか
原作:新川帆立『競争の番人』(講談社)
脚本:丑尾健太郎、神田優、穴吹一朗、蓼内健太
演出:相沢秀幸、森脇智延
プロデュース:野田悠介
制作・著作:フジテレビ
©︎フジテレビ
公式サイト:https://www.fujitv.co.jp/kyosonobannin/
公式Twitter:@kyoso_fujitv
公式Instagram:@kyoso_fujitv
『鎌倉殿の13人』
NHK総合にて、毎週日曜20:00~放送
BSプレミアム、BS4Kにて、毎週日曜18:00~放送
主演:小栗旬
脚本:三谷幸喜
制作統括:清水拓哉、尾崎裕和
演出:吉田照幸、末永創、保坂慶太、安藤大佑
プロデューサー:長谷知記、大越大士、吉岡和彦、川口俊介
写真提供=NHK
金曜ドラマ『石子と羽男ーそんなコトで訴えます?ー』
TBS系にて、毎週金曜22:00~22:54放送
出演:有村架純、中村倫也、赤楚衛二、おいでやす小田、さだまさし
脚本:西田征史
演出:塚原あゆ子、山本剛義
プロデュース:新井順子
編成:中西真央、松岡洋太
音楽:得田真裕
主題歌:「人間ごっこ」RADWIMPS(Muzinto Records / EMI)
製作:TBSスパークル、TBS
©︎TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/ishikotohaneo_tbs/
公式Twitter:@ishihane_tbs
公式Instagram:@ishiko.to.haneo_tbs