『プリズム』が提示する本当の“共存”とは? スズランとユリのような皐月と陸の関係

『プリズム』が提示する本当の“共存”とは?

 そんな皐月に、悠磨はスズランとユリのような皐月と陸の関係が羨ましいと感じる気持ちを打ち明ける。それは前回、信爾が梨沙子に放った「ずっとあなたに嫉妬してました」という言葉と似たものを感じさせた。

 皐月や梨沙子にとって、耕太郎と信爾、陸と悠磨は強い何かで惹かれ合っていて、そこには立ち入れないような疎外感を抱くのかもしれない。だけど信爾や悠磨からは、耕太郎と梨沙子、陸と皐月は違いを乗り越え、共存する理想的な関係に見えるのではないだろうか。

 共存する。それはきっと、自分と異なる特性や属性、価値観を完璧に理解することではない。梨沙子が耕太郎を完全には許せないまま、信爾との関係を認めたように、陸が「皐月は皐月のままでいて」と望むように、違いは違いのままで尊重すること。そのために、皐月も梨沙子も違いを知るところから、ゆっくりと歩みを進めたばかりだ。

 そのような営みの前に立ちはだかるのは、共存を拒む人たちだ。朔治(矢島健一)は陸に“普通”を押し付けるために皐月との結婚を急がせ、耕太郎のホームページには多数の匿名者から差別的な発言が書き込まれる。自分と異なる誰かのことを端から知ろうともしない彼らに、どう向き合っていけばいいのか。

 陸は皐月との結婚を自ら望むが、気になるのは「皐月のテラリウムを使って、あの庭を取り戻そうとしてたんだ」という発言だ。亡くなった母親が庭を大事に育てていた頃の、つまりは朔治を含めた家族との幸せな日々。結婚も単なるその再現のためだけではないことを願う。

■放送情報
ドラマ10『プリズム』
NHK総合にて、毎週火曜22:00〜22:45放送<全9回>
出演:杉咲花、藤原季節、森山未來ほか
作:浅野妙子
音楽:谷口尚久
制作統括:小松昌代(NHKエンタープライズ)、岡本幸江(NHK)
写真提供=NHK

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