『スパイダーマン』最大級のカタルシスを感じるために WOWOWで観る実写版全8作

WOWOWで観る『スパイダーマン』実写全作

 8月27日からWOWOWオンデマンドにて配信中の『スパイダーマン』シリーズ7作に、最新作『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』が加わり、実写版全8作品が視聴可能となる。また、トビー・マグワイア版3部作と映画『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』がWOWOWにて放送される。『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』に関しては日本で2022年の1月に公開された作品であり今回初放送となるわけだが、早くもテレビ放送されることが嬉しい。劇場で泣き腫らした人にとっても、観に行きたかったけど観に行けなかった人にとっても、過去作とセットで配信・放送されるこのスペシャルは見逃せないものだ。なぜなら、特に『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』という作品は“マルチバース”の概念とともに、これまでの『スパイダーマン』作品が全部繋がってくるという、夢のようなドリームマッチ映画でもあるからだ。

『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』©︎2021 Columbia Pictures Industries, Inc. and Marvel Characters, Inc. All Rights Reserved. | MARVEL and all related character names: ©︎ & TM 2022 MARVEL

 本作自体は、マーベル・シネマティック・ユニバース(以下、MCU)における『スパイダーマン』シリーズの第3作。トム・ホランド演じるピーター・パーカーは、前作『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』のラストで敵のミステリオ(ジェイク・ギレンホール)に世界中に自分の正体を明かされてしまう。その直後から始まる本作では、自分のプライバシーがなくなってしまっただけでなく、親友のネッド(ジェイコブ・バタロン)や恋人のMJ(ゼンデイヤ)など“スパイダーマンと距離が近い人”の生活にも支障をきたす事態に。そこで彼は『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』で共闘したドクター・ストレンジ(ベネディクト・カンバーバッチ)の元を訪れ、「スパイダーマンの正体を知る者の記憶を消す」魔法をかけてもらうことに。しかし魔法は失敗し、逆に「スパイダーマンの正体を知る者」があらゆるユニバースからやってきてしまう事態になる。

『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』©︎2021 Columbia Pictures Industries, Inc. and Marvel Characters, Inc. All Rights Reserved. | MARVEL and all related character names: ©︎ & TM 2022 MARVEL

 こうして、トビー・マグワイア版『スパイダーマン』シリーズ、アンドリュー・ガーフィールド版『アメイジング・スパイダーマン』シリーズのヴィランがトム・ホランド版スパイダーマンの世界に一挙集結! まずこの点が、過去作を振り返っておきたいポイントだ。『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』の見どころは、ピーターが「ヴィランたちの問題を解決して、元の世界に戻ってもスパイダーマンと戦わないで済むようにする」こと。本作を観るだけでも、軽くそれぞれのヴィランの能力や背景は明かされる。しかし、各作品を振り返って“なぜ、彼らがヴィランになってしまったのか”、“彼らはスパイダーマンとの戦いでどんな結末を迎えてしまったのか”という点を深く理解しておけばおくほど、『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』の旨味は増す。

『スパイダーマン2』Motion Picture ©︎2004 Columbia Pictures Industries, Inc. All Rights Reserved. | Spider-Man Character ®️ & ©︎2013 Marvel Characters, Inc. All Rights Reserved.
『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』©︎2021 Columbia Pictures Industries, Inc. and Marvel Characters, Inc. All Rights Reserved. | MARVEL and all related character names: ©︎ & TM 2022 MARVEL

 『スパイダーマン』に登場したグリーン・ゴブリンことノーマン・オズボーン(ウィレム・デフォー)、『スパイダーマン2』に登場したドック・オックことオットー・オクタビアス(アルフレッド・モリーナ)、『スパイダーマン3』に登場したサンドマンことフリント・マルコ(トーマス・ヘイデン・チャーチ)、『アメイジング・スパイダーマン』に登場したリザードことカート・コナーズ(リス・エヴァンス)、『アメイジング・スパイダーマン2』に登場したエレクトロことマックス・ディロン(ジェイミー・フォックス)。それぞれ同じ俳優が同じ役で登場する点も魅力的だ。そして、再登場するのはヴィランだけじゃない。もう周知のことになってしまい、劇場公開時ほどのサプライズにはならないかもしれないが『スパイダーマン』でピーター・パーカーを演じたトビー・マグワイア、『アメイジング・スパイダーマン』でピーター・パーカーを演じたガーフィールドも本作にそれぞれスパイダーマンとして登場するのだ。そして、ここにもう一つ過去作を絶対に振り返ったほうがいい理由がある。それは、『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』はトム・ホランド版ピーターの物語に止まらず、過去作のピーターたちの物語の一つの帰結にもなっているからだ。特にそれは、ガーフィールド演じる2代目スパイダーマンにおいて強く言えることである。

『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』©︎2021 Columbia Pictures Industries, Inc. and Marvel Characters, Inc. All Rights Reserved. | MARVEL and all related character names: ©︎ & TM 2022 MARVEL

 17年ぶりの続投となったモリーナなどCGI技術で若返りを果たし、当時と少しも変わらないヴィランたちに対して、スパイダーマン組は歳をとって大人になっている。この演出ひとつをとっても、ヴィランが“事件当時に囚われたまま”であること、一方でスパイディたちが歳を重ねたことで若かりし自分(トム・ホランド版ピーター)を救えるようになっていることを意味している。そしてそれぞれのピーターが救いきれなかったヴィランと久々の再会を果たすシーンは、彼らの間にあった因縁を理解すればするほどエモーショナルなものになっていくのだ。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「映画シーン分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる