波瑠×間宮祥太朗の“同志”という形の尊さ 『魔法のリノベ』が描き出す“幸福追求”の物語
玄之介は、小梅の“スパルタ指導”の甲斐あって、営業マンとしてめきめきと成長していく。仕事のみならず、人生そのものにもだんだんと光が差して、初回から回を追うごとに、死んだ魚のようだった目にどんどん明るさが戻ってくる。間宮祥太朗の演じ分けが見事だ。
そして、辣腕の合理主義だった小梅が「依頼主の心にとことん寄り添う」という玄之介の営業スタイルに影響を受けて、しだいに柔らかさを宿していく。「まるふく工務店」の温かいチームワークの中で、閉ざしていた心が解れていく。隙あらばボケたがる「まるふく」の面々に、絶妙な間でツッコミむ波瑠のコメディエンヌとしてのセンスも見どころだ。
「リノベは、魔法ですから」という、小梅と玄之介の決め台詞、そして番組タイトルにも表れるように、「魔法」がこのドラマのキーワードだ。しかし実は、「本当の“魔法”など存在しない」ということも逆説的に描いている。リノベーションは、「それさえ施せば万事一発解決」という「完全無欠のソリューション」ではない。大事なのは、リノベーションをきかっけとした、その人自身による「気づき」であり、知恵であり、対話であり、前を向いて取り組む姿勢だ。リノベーションは、暮らす人が幸せを追求するための「手助け」に過ぎない。
主役は「リノベーション」ではなく、あくまでも「人の人生」。そのメッセージは、エンドロールにも表れている。同名の漫画原作を実写化するにあたり、リノベーション後の様子を『大改造!!劇的ビフォーアフター』(朝日放送・テレビ朝日系)よろしくドラマチックな見せ方にする選択肢もあったかもしれない。しかし、このドラマは“アフター・リノベ”を、エンドロールにさりげなく乗せて流すのみだ。依頼主の「わ〜すごい!」「お陰で暮らしが素晴らしいものになりました!」などという台詞はない。ヨルシカによる主題歌 「チノカテ」が流れる中、新しくなった部屋での暮らしを満喫する依頼者の笑顔が、無音で映し出されるだけだ。それがかえって、観る者の心にぐっと迫ってくる。
「リノベ」は「ゴール」でも「解決」でもない。ここからが「人生のリノベーション」のスタートであり、これからも日々は続いていく。決して派手さはないものの、しみじみ、じんわりと心に沁みてくる、この人間臭いドラマの後半が、どのように展開していくのか、楽しみに見守りたい。
■放送情報
『魔法のリノベ』
カンテレ・フジテレビ系にて、毎週月曜22:00〜放送
出演:波瑠、間宮祥太朗、金子大地、吉野北人(THE RAMPAGE)、SUMIRE、本多力、山下航平、YOU、近藤芳正、原田泰造、遠藤憲一、浅野ゆう子、佐伯大地、渡辺真起子、寺島進、村川絵梨、岩松了ほか
原作:星崎真紀 『魔法のリノベ』(双葉社 JOUR COMICS)
脚本:上田誠(ヨーロッパ企画)
主題歌:ヨルシカ「チノカテ」(ユニバーサルJ)
音楽:瀬川英史
プロデューサー:岡光寛子(カンテレ)、伊藤茜(メディアプルポ)、田端綾子(メディアプルポ)
監督:瑠東東一郎、本田隆一
制作協力:メディアプルポ
制作著作:カンテレ
©カンテレ
公式サイト:https://www.ktv.jp/mahorino/
公式Twitter:@mahorino8
公式Instagram:@mahorino88