『ワンナイト・モーニング』柿本ケンサク監督が語る、若手俳優たちと紡ぎ出した8色の“答え”

『ワンナイト・モーニング』監督インタビュー

半人前の登場人物それぞれが主役

ーー演出面に関して、俳優部に何かお伝えしたことはありますか?

柿本:みなさん実力のある方々でありながら若手ということで、“まだ何者にもなれていない”登場人物たちと近い部分があったんだと思うんですよね。なので、“何者かになろう”ともがく姿が作品にも、それぞれが演じるキャラクターにもあっていて、僕から言うことは特にありませんでした。もちろん、僕も足りない部分があるので、みなさんのことを見て勉強させていただこうと思っていました。半人前たちが集まったこのドラマを通して、一人前にはなれていないかもしれないけれど、一歩前進したい想いがありました。

ーー第1話『梅干しのおにぎり』は、高校の同窓会で無職の村田涼太(上杉柊平)が片想いしていた真奈月千春(芋生悠)と10年ぶりに再会するところから始まります。上杉柊平さんと芋生悠さんの印象を教えてください。

柿本:それこそ村田はクラスの端っこにいるような子だったんですけど、上杉くんがカッコよすぎて、カッコ悪く見せるのにとても苦労しました(笑)。芋生さんも同じです。高校生のころの千春はすごく輝いていたけど、10年後の彼女は(ある事情から)陰があるように見せないといけなかった。どう“しおれた女”に見せるのかを考えていたので、“芋生さんゴメン!”と思いながら演出していましたね。

ーーほかにもさまざまな物語があってとても興味深いものばかりでした。個人的には第5話『タマゴサンド』の高校3年生・宮川晴人(前田旺志郎)と岩本カナ(池田朱那)のやりとりが印象的でした。

柿本:宮川がカナにキスをしようとするシーンがあるのですが、宮川を演じる前田くんが彼のキャラクターに合いすぎて、現場でもみんな笑っていました。前田くんだからこそ、ああいったシーンが生まれたんだと思います。池田さんも終始明るくて、いい空気感でした。

ーー本当に素敵な現場ばかりだったんですね。

柿本:そうですね。半人前の登場人物たちに “それぞれが主役なんだよ”と色を与えてあげたいと思っていたけど、僕が与える前にすでに俳優のみんなが色を持ってきてくれていました。

柿本監督が撮影に込めた想い

ーー撮影を終えた今、改めて本作への思い入れも強まったのでは?

柿本:じつは当初、男女の話なので、僕と女性の監督とで4話ずつ分けてやるという話が出てたんです。確かにパッケージとして面白いと思ったんですけど、生意気ながら「全話やるのであればやりたいです」とお話させていただいて……。初めからそんなわがままを言ったので、プロデューサーさんからは「コノヤロー!」と思われたと思うんですけど(笑)、了承していただき、すべての回を監督させていただくことになりました。なぜそんなことを言ったのかと言うと、ドラマ経験のない僕だからこそ、この物語の個性を作ることができると思ったからです。おそらくほかの監督と対になったときに、コントラストが出過ぎてしまうんじゃないかなと思ったんですよね。結果的に、人の目には見えない繊細な心の機微や葛藤をビジュアル化したことで、見過ごしてしまいそうな日常を少しだけ輝かせることができたのかな、と思っています。

ーー最後に監督が思う本作の見どころを教えてください。

柿本:誰もがどこかで感じたことがある、むずがゆい気持ちや、恥ずかしい気持ち、思い出したら赤面してしまうような思い出が散りばめられています。いつかあった、これからあるだろう、もしくは今感じている、“自分は何者であるか分からない人たち”の答えを探るヒントになる話だと思うので、何も考えずに観ていただければと思います。きっと、背中を押してくれるはずです。

■放送・配信情報
『WOWOWオリジナルドラマ ワンナイト・モーニング』(全8話・オムニバス)
WOWOWにて、8月5日(金)スタート
【放送:WOWOWプライム】毎週金曜23:00[第一話無料放送]
【配信:WOWOWオンデマンド】各月の初回放送終了後、同月放送分を一挙配信[無料トライアル実施中]
出演:上杉柊平、芋生悠、望月歩、伊藤万理華、栁俊太郎、浅川梨奈、河合優実、藤原樹(THE RAMPAGE from EXILE TRIBE)、前田旺志郎、池田朱那、川島海荷、水沢林太郎、石橋菜津美、水間ロン、青木柚、筧美和子ほか
原作:奥山ケニチ『ワンナイト・モーニング』(少年画報社刊) 
脚本:蛭田直美
監督・撮影:柿本ケンサク
音楽:愛印
製作:WOWOW ダブル・フィールド 

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