『ワンナイト・モーニング』柿本ケンサク監督が語る、若手俳優たちと紡ぎ出した8色の“答え”

『ワンナイト・モーニング』監督インタビュー

 10年間想い続けた同級生との再会や、童貞卒業を目指しマッチングアプリで出会った女の子との初デート、ドライな関係を続けるセフレ……など、様々な関係にある男女の忘れられない一夜と、その後の朝ごはんを共にする時間までを描いたグルメラブストーリー『WOWOWオリジナルドラマ ワンナイト・モーニング』が、本日8月5日23:00よりWOWOWプライムにて放送、WOWOWオンデマンドにて配信スタートとなる(第1話放送終了後、第1話~第4話までを一挙配信、第5話~第8話を9月2日の第5話放送終了後、一挙配信)。

『ワンナイト・モーニング』原作書影 (c)奥山ケニチ/少年画報社

 奥山ケニチの同名漫画をドラマ化した本作。物語は8話のオムニバス形式となっており、誰もが一度は感じたことのある苦しみ、生きづらさ、葛藤に振り回される若者を、若手実力派俳優たちが体当たりで演じている。

 監督は、映画『恋する寄生虫』(2021年)、ショートムービー『太陽-TAIYO-』(2022年)ほか、多数のアーティストのミュージックビデオを手がける柿本ケンサク。今回、男女2人がたどり着いた“あの夜”を、原作にリスペクトを込めながらも、美しいビジュアルと繊細なタッチで“ドラマ版”『ワンナイト・モーニング』として昇華させた柿本監督に話を聞いた。

映像だから表現できる“感情の変化”

ーーまずは、原作を読んだ感想を教えてください。

柿本ケンサク(以下、柿本):“この作品をどうやって映像化するか”という視点で読んだので、純粋な読者としては見ていなかったかもしれません。ただ、ドラマを撮っているときにも思ったのですが、自分だったら飛ばしているような繊細な心の機微のようなものを感じました。それが時に痛かったり、キュンときたり……。自分には経験がないものだけれど、どこか懐かしい気持ちになりました。

ーー本作が監督にとって連続ドラマ初作品です。

柿本:映画を監督したときに、自分に圧倒的に足りないと思ったのが『ワンナイト・モーニング』のような繊細な感情の変化なんです。そう思っていたところに、今回のお話をいただいたので、ぜひチャレンジしたいなと思いました。

ーー本作に取り組むにあたって、ご自分の中で決めていたことはありますか?

柿本:ファンの方に怒られるかもしれないですけど、原作をそのまま映像化しようとは思っていませんでした。それは漫画で完成されていることなので、原作では表現していないところを描いたドラマならではの『ワンナイト・モーニング』の世界を作りたいと思っていましたね。

ーー確かにドラマを拝見すると、漫画では描かれていなかった部分にフォーカスしていた印象があります。

柿本:この漫画の主人公たちが抱えているだろうと思われる、目で見ることができない悩み、苦しみ、葛藤を表現することを意識しました。漫画の状態だと読む人のペース、空気感、状況で、キャラクターたちの繊細な苦しみや悲しみを感じられると思うのですが、映像になると少し違って、こちら側のペースで時間軸が進んでいくじゃないですか。この表現が正しいかは分かりませんが、目には見えない彼らの気持ちを、あえて“分かりやすくなく”ビジュアル化したいなと思いました。(登場人物の)心の中で渦巻いているものを、分かりやすく描くのは違うのかなと。すごくゆるやかな曲線を描いている『ワンナイト・モーニング』の話の中にも、じつは(登場人物の心の中に)マグマのような葛藤があって、それを観る方にどう感じていただくかを考えていました。

ーー今回、脚本はドラマ『これは経費で落ちません!』(NHK総合)などで知られる蛭田直美さんが担当されました。

柿本:蛭田さんはキャラクターの構成を丁寧にされる方です。蛭田さんが原作からジャンプアップしてキャラクターを描いてくださっていたので、僕は、登場人物が台詞にも、行動にも出さない、けれど葛藤している心の内をどう表現するかを考えました。

ーーこのドラマを作るに際して、特に気にかけたところ、こだわったところは?

柿本:たくさんありますが、それぞれの話にキーカラーを作ったところですかね。きっとこの話に出てくる人たちは、クラスの中心にいるような人たちは少ないと思います。端っこにいたり、内気だったり、大多数派ではない弱き者のような気がしていて……。本作は、そういった自分が“何者かも分かっていない人たち”が、“何者か”になるために、必死にもがいている一夜の話だと思っています。そんな彼ら彼女らの話にそれぞれひとつの色を与えることで、色鉛筆が並んでいるようなパッケージにできたらいいなと思っていました。

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