『D.P.』『ユミの細胞たち』『イカゲーム』 韓国初「青龍シリーズアワード」授賞式まとめ

「青龍シリーズアワード」授賞式まとめ

 今や動画配信サービスなしに韓国ドラマは語れない時代。韓国の配信コンテンツを対象とした、韓国初の授賞式となる「第1回青龍シリーズアワード」が7月19日に韓国の仁川で開催された。

 授賞式では、配信サービスのNetflixをはじめ、ディズニープラス、seezn、 Apple TV+、WATCHA、wavve、kakao TV、Coupang Play、TVINGが制作や投資した韓国ドラマやバラエティ番組(2021年5月1日~2022年4月30日までに公開された作品)が対象となり、国内ドラマ、芸能部門そして人気スター賞など計13部門から、5作品(5名)がノミネートされ、表彰する。今回はテレビ部門から日本でも視聴できる3作品を中心に、振り返りながら紹介していきたい。

チョン・ヘイン(写真=アフロ)

 注目のテレビ部門最優秀作品賞には、Netflixシリーズ『D.P. -脱走兵追跡官-』(以下、『D.P.』)が選ばれた。さらには新人男優賞に本作に出演しているク・ギョファン、TIRTIR人気スター賞には主演のチョン・ヘインと3冠を獲得する。

 本作は韓国の徴兵制度をテーマに扱った社会派作品。脱走兵を捕獲し軍に連れ戻す特殊部隊をDeserter Pursuit=「D.P.」と呼び、軍務から離脱した脱走兵の話を軸にストーリーが展開される。荒んだ軍隊組織、壮絶ないじめなどが赤裸々に描写されているのも見どころ。一見、他人事に感じるが、“傍観社会”への投げかけは視聴者をぐっと捕らえて逃さない。配信サービスのオリジナル作品だからこそ生まれた傑作と言えるだろう。

ク・ギョンファン(写真=Mydaily/アフロ)

 なかでも着目したいのは、新人男優賞を受賞したク・ギョファン。主人公アン・ジュノ(チョン・ヘイン)とバディを組んだ先輩「D.P.」ハン・ホヨル役を務めている。「新人賞とは新しい演技をし続けるという意味だと受け取って、視聴者の皆さんとは初対面での初デートをするかのように演技していきたい」(※1)とコメントした。

 本作でク・ギョファンを初めて見た人が大半だと思われるが、とてもチャーミングな性格で愛されキャラである。独立映画の脚本や編集も手掛ける監督としての才能もあり、同じ俳優からも共演のラブコールを受ける人気ぶり。『D.P.』では、重いテーマとのバランスを取る、エンタメ性を持った欠かせない役どころを見事に演じている。日本でも上映された映画『モガディシュ 脱出までの14日間』でも抜群の存在感を放ち、これからも多くの作品で出会いたい俳優だ。

 本作はシーズン2の制作が発表されており、この日も撮影だったとのこと。5月に開催された第58回百想芸術大賞(韓国のゴールデングローブ賞)においてもテレビ部門の作品賞を受賞している『D.P.』は、視聴者の大きな期待を背負って戻ってくる。

キム・ゴウン(写真=アフロ)

 続いて、『ユミの細胞たち』で主演女優賞を受賞したのはキム・ゴウン。水色のドレスをまとい、童話から出てきたプリンセスのような美しさで登場。共演したアン・ボヒョンはNetflixシリーズ『マイネーム:偽りと復讐』の助演男優賞にノミネートされており、会場では二人がハイタッチするというファンには嬉しい姿が披露された。

 名前を呼ばれたキム・ゴウンは驚きながらも、「青龍映画祭で新人賞を受賞してから、今年でちょうど10年です。深い意味のあるものだと感じます。当時は“これから先、俳優として多くの挫折や試練があると思う”と話しましたが、この10年を振り返るとその通りでした。ですが、演技したいという気持ちは当時も今も同じです。これからも成長し続ける俳優でいたいと思います」(※2)と感想を述べた。

 『ユミの細胞たち』はアニメーションと実写が組み合わさった新感覚ドラマ。グローバル累計閲覧数が34億回(2021年9月時点)以上の大人気ウェブ漫画が原作だ。食品会社で働く主人公のキム・ユミ(キム・ゴウン)が過ごす日々の中に、ユミの脳内にいる愛細胞、理性細胞、感性細胞、腹ぺこ細胞などのさまざまな役割を持った細胞たちの世界が同時に描かれる。この細胞がとにかく可愛くて癒されるのだ。後輩の紹介で出会ったク・ウン(アン・ボヒョン)との恋愛は平凡ではあるものの、理想ではなく現実に近い男女間の恋愛模様に深く共感もすれば、チクチクと胸に刺さる場面もある。シーズン1はAmazonプライム・ビデオで配信中。韓国ではシーズン2の放送が2022年7月に終了しているため、日本での放送が待ち遠しいところ。 

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