「ケータイ小説」にハマった人へ贈りたい 10年愛の物語『あなたがここにいてほしい』

『あなたがここにいてほしい』が描く10年愛

 リアルサウンド映画部の編集スタッフが週替りでお届けする「週末映画館でこれ観よう!」。毎週末にオススメ映画・特集上映をご紹介。今週は小学校の朝読でギャルからケータイ小説を借りて読んでいた大和田が『あなたがここにいてほしい』をプッシュします。

『あなたがここにいてほしい』

「十年間一緒にいた彼女は、明日他人の嫁に行く」

 2013年1月、中国最大のソーシャルカルチャーサイト「ドウバン」に投稿されたこの“愛”の実話を、プロデューサーのチェン・クォフーが投稿から1カ月も経たずに映画製作権を取得、そして8年かけて映画化した。

 日本でも定番のネット小説。『恋空』『天使がくれたもの』『teddy bear』『赤い糸』はどれも2000年代に小説投稿サイトに“ケータイ”から投稿され、映画化された作品だ。ネット発の恋愛作品には、リアルなエピソードも多く、とても共感性が高い。そしてチェン・クォフーがリアルに近い恋愛映画を求めた本作も、プロジェクトが一時中断に追い込まれるも、新鋭監督シャー・モーと出会い、こだわり抜いて製作されている。

 高校時代に校内で出会ったリン・イーヤオ(チャン・ジンイー)に一目惚れをしたリュー・チンヤン(チュー・チューシアオ)。なんとか彼女にラブレターを渡すが、生活指導担当のヤオ先生にみつかってしまう。頭を丸めて校内放送にて謝罪すれば見逃してやるという学校に対し、リューはその場を利用して彼女に愛を告白し退学となる。リューはリンと一緒に住むマンション購入を夢見ながら生活を送るが、忍び寄る現実にあらがえずに次第に空回りをするようになる。そんな中、学生時代からの友人であるダーチャオからの頼みで、大きなプロジェクトを仕切ることになり、リューはかつての現場仲間を呼び寄せる。リューがリンに一目惚れした初日から、3650日におよぶ10年愛を綴った物語。

 劇中でとある人物が「金なら肝臓を売ってでも返すから」という言葉に驚いた。お金やマイホーム、格差社会、労働環境といった問題がふりかかる本作は、純愛だけでなく、中国における結婚の現状に問題提起するテーマも持ち合わせている。リューは体を張って働くが、その環境は観ていて過酷な現場ばかり。不利な条件や計画変更を言い渡されても、リューはリンには打ち明けず、一人で借金を背負う。それは全てリンと結婚するため、リンを愛するがゆえ。相手の事情を知らないリン、そしてリューは互いへの気持ちに苦しみを抱えることも。「俺を愛してるか?」「あなたは?」。相手へのそれぞれの質問に答えられず、抱きしめ合うシーンには、愛し合う彼らの苦しみを感じた。

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