坂口健太郎×杏『競争の番人』第1話の脚色に今後も期待 新川帆立による原作との違いは?

『競争の番人』第1話の脚色に今後も期待

 第1話、原作と変わっていたのは、ホテル経営会社によるウェディング事業のカルテルが行われているのが、原作では「栃木県S市」とされているのに、ドラマでは実在の日光市になっていたこと。不正の舞台となる設定なのにロケを許可した日光市とホテルの太っ腹がすばらしい。そして、ホテルの専務・天沢雲海(山本耕史が原作のイメージぴったり! 悪そう!!)の下で働く長澤俊哉(濱津隆之)がノートパソコンを持って逃げ出し、白熊と小勝負がその跡を追うと、長澤が橋の上からパソコンを川に投げてしまうくだりで、パソコンを回収するため冬の川に入ったのが小勝負だったこと。実は、原作では白熊が先に川に入りパソコンを回収するものの溺れそうになって、それを小勝負が助け「あなたは馬鹿ですか」と言う。しかし、そのまま実写にしてしまうと、小勝負が女性に優しくない嫌な男に見えてしまうし、また、不正を許さないという公取審査官としての使命感を強く持っているのは第1話時点では小勝負の方なので、それを表現する意味で上手い脚色だった。

 また公取のメンバーも原作とは違うところがあるのだが、今のところ原作にまったく登場していないのは、小日向文世が演じる国土交通省の藤堂事務次官。小勝負とは過去に浅からぬ因縁があるということで、彼が公取に入ったのも藤堂の影響がありそうだ。ラスボスとしてマークしておきたい。

競争の番人

 原作を結末まで読むと、強く印象に残るのは、公取は生き馬の目を抜くような競争社会において強者の横暴を許さない正義の味方であること。第1話に出てきた花屋のような小規模の自営業者や筆者のようなフリーランスの個人事業主を守ってくれる審査官たちがいることに救われた気持ちになった。コロナ禍がなかなか収束せず、多くの自営業者が追い詰められている今、そんな共感を呼ぶのではないだろうか。

 7月18日放送の第2話では、ホテル長の長澤が会社を辞めさせられ、白熊と小勝負が彼からカルテルの証言を得ようとする。ほぼ原作に沿った展開になりそうだ。不正をする上司に忠誠を尽くしても報われるのか? または公取に協力すれば人生をやり直せるのか? 原作どおりなら、きれいごとではない現実が描かれそうだ。長澤の娘役で、『カムカムエヴリバディ』(NHK総合)の新津ちせが出てくるのにも注目。

■放送情報
『競争の番人』
フジテレビ系にて、毎週月曜21:00~21:54放送
出演:坂口健太郎、杏、小池栄子、大倉孝二、加藤清史郎、寺島しのぶほか
原作:新川帆立『競争の番人』(講談社)
脚本:丑尾健太郎、神田優、穴吹一朗、蓼内健太
演出:相沢秀幸、森脇智延
プロデュース:野田悠介
制作・著作:フジテレビ
(c)フジテレビ
公式サイト:https://www.fujitv.co.jp/kyosonobannin/
公式Twitter:@kyoso_fujitv
公式Instagram:@kyoso_fujitv

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「国内ドラマシーン分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる