『イカゲーム』が史上初の快挙! 第74回エミー賞候補から見える海外ドラマの潮流
アメリカのテレビ業界で最高の権威とされている、第74回プライムタイム・エミー賞(通称エミー賞)のノミネーションが発表になった。アメリカ国内で2021年6月1日から2022年5月31日までに放送・配信された作品が対象で、テレビ業界で働く27支部約17,000名のテレビ芸術科学アカデミー会員によって候補作品が選出されている。8月12日から8月22日に本投票が行われ、9月の授賞式で受賞作品・受賞者が発表される。今年のノミネーション結果をもとに、現在の海外ドラマの潮流を考えてみたい。
『サクセッション』『テッド・ラッソ』『ホワイト・ロータス』が3強
番組別のノミネーションでは、『メディア王 ~華麗なる一族~』(『サクセッション』)がドラマシリーズ作品賞など25部門でトップ、『テッド・ラッソ:破天荒コーチがゆく』と『ホワイト・ロータス / 諸事情だらけのリゾートホテル』が20部門で並び、『Hacks(原題)』と『マーダーズ・イン・ビルディング』の17部門、『ユーフォリア/EUPHORIA』の16部門、『バリー』、『DOPESICK アメリカを蝕むオピオイド危機』、『セヴェランス』、『イカゲーム』の14部門、『オザークへようこそ』と『ストレンジャー・シングス 未知の世界』の13部門、『マーベラス・ミセス・メイゼル』が12部門、『パム&トミー』が10部門と続く。10部門以上ノミネートされている作品のうち、『Hacks』以外は現在日本で観ることができる。ストリーミングサービスが増え、世界同時配信が行われるようになり、海外ドラマファンにとって恵まれた時代だということがわかる。デビューシーズンながら20部門ノミネートとなった『ホワイト・ロータス』は、ジャック・ブラックが主演した映画『スクール・オブ・ロック』(2003年)の脚本家、マイク・ホワイトがショーランナーを務めるシニカルなコメディ。シーズン2続投も発表されているので、この先のヒットドラマ流行地図を塗り替えていく存在になるかもしれない。
最多プラットフォームはHBO/HBO Maxの計140ノミネート
アメリカでの放送・配信プラットフォーム別では、『サクセッション』『ホワイト・ロータス』『Hacks』『ユーフォリア』『バリー』などのHBO/HBO Maxが合計140部門でトップ。そのうちHBO Maxオリジナル作品は『Hacks』『フライト・アテンダント』『ステーション・イレブン』で計32部門となった。ディズニーは、地上波放送のABCなども含め147部門の大量ノミネート。ストリーミングに限った内訳は、Huluの『マーダーズ・イン・ビルディング』『DOPESICK』『ドロップアウト~シリコンバレーを騙した女』で58部門、ディズニープラスの『ザ・ビートルズ:Get Back』『ロキ』『ムーンナイト』など34部門などとなっている。『オザークへようこそ』『ストレンジャー・シングス』『イカゲーム』などのNetflixは、合計105部門でノミネートされている。そのほかのストリーミングサービスでは、Apple TV+が『テッド・ラッソ』『セヴェランス』など51部門、Amazonプライム・ビデオが『マーベラス・ミセス・メイゼル』などで30部門ノミネートとなった。
『イカゲーム』エミー史上初の非英語作品賞ノミネート
昨年9月の配信開始より様々な記録を樹立している『イカゲーム』は、ドラマ部門作品賞にノミネートされた初めての非英語作品となった。『パラサイト 半地下の家族』(2019年)で、アカデミー賞史上初めて非英語作品が作品賞を受賞したのに続き、テレビ番組の最高峰エミー賞でも受賞となるかが期待されている。『イカゲーム』は作品賞のほか、主演男優賞にイ・ジョンジェ、助演男優賞にパク・ヘスとオ・ヨンス、助演女優賞にチョン・ホヨン、ゲスト出演女優賞にイ・ユミがノミネート。ファン・ドンヒョク監督はドラマ部門監督賞と脚本賞にノミネート、そのほか美術賞、シングル・カメラ撮影賞、シングル・カメラ編集賞、オリジナルテーマ音楽賞、スタント・パフォーマンス賞など14部門にノミネートされる快挙となった。『イカゲーム』は全米映画俳優組合賞でアンサンブルキャスト賞とイ・ジョンジェのテレビシリーズ主演男優賞、チョン・ホヨンの助演女優賞、001番を演じたオ・ヨンスはゴールデングローブ賞で助演男優賞を受賞している。シーズン2の制作が発表されていることから、エミー賞常連となる可能性もある。