『イカゲーム』が史上初の快挙! 第74回エミー賞候補から見える海外ドラマの潮流

エミー賞候補にみる海外ドラマの潮流

昨年に続き、『テッド・ラッソ』は今年も20部門ノミネート

 この大量ノミネートで、『テッド・ラッソ』の人気・知名度の日米格差が激しいことが明らかになった。2019年に配信されたシーズン1は、昨年の第73回エミー賞でコメディシリーズ部門作品賞、主演男優賞、助演女優賞、助演男優賞、監督賞、脚本賞など主要20部門にノミネート。放送(配信)初年度作品としては、2010年の『Glee/グリー』の19部門を凌ぐ史上最多部門ノミネートを記録している。今年も20部門と好調だが、その中には主演のジェイソン・サダイキスだけでなく、助演男優賞に3名、助演女優賞に3名、ゲスト女優・男優に3名、そしてキャスティング賞と、役者陣の評価が高い。去年から今年にかけて公開されたマーベル・シネマティック・ユニバース作品に『テッド・ラッソ』からすでに2人が出演していることからも、アメリカでの人気沸騰具合がわかるだろう。二度あることは三度ある、MCUファンは『テッド・ラッソ』を観ておくべきである。ちなみに『テッド・ラッソ』はApple TV+で配信されているが、制作スタジオはワーナー・ブラザース・テレビジョン。今作も含めると、HBOとHBO Maxを擁するワーナー・メディアが力を示している。

テッド・ラッソ:破天荒コーチがゆく
『テッド・ラッソ:破天荒コーチがゆく』Copyright (c)2022 Apple Inc. All rights reserved.

「1本でチャンス2回」2部構成配信が行われる理由

 エミー賞候補作は、2021年6月1日から2022年5月31日までに放映/配信された作品が対象となる。アカデミー賞候補作が年末のノミネーション期間ギリギリに劇場公開されるように、人々の記憶に残りやすい春ごろに放送される作品が有利とされてきたが、最近はこの候補期間を逆手にとったシリーズ作品ならではの配信・放送形態が行われている。例えば、5月27日にシーズン4の第1部7話までが配信された『ストレンジャー・シングス』は、年度をまたいだ7月1日に第2部の2話が配信されている。また、アメリカではAMCで放送されている『ベター・コール・ソウル』も、シーズン6の第一部が4月18日から、第2部が7月11日から週1回放送という2部構成。1シーズンで2年に渡ってノミネート資格を得る、賢い戦略と言える。なお、第74回エミー賞においては、『ストレンジャー・シングス』は13部門、『ベター・コール・ソウル』は7部門でノミネートされている。

ストレンジャー・シングス 未知の世界
『ストレンジャー・シングス 未知の世界』Cr. Courtesy of Netflix (c)2022

アメリカのローカルテレビ賞ではなく、グローバルの時代へ

 エミー賞はアメリカのテレビ業界で働く会員が選ぶ賞だが、特にナラティブのドラマシリーズなどはストリーミングなどを通じて世界配信される機会が増え、もはやアメリカローカルの賞とは言えなくなってきている。ノミネーション発表時点で、ほぼ全ての候補作品が日本で視聴可能なのも、グローバル時代の賜物だと言える。これは映画も同様のことが言えるが、特にパンデミック以降の制作現場では制作費・人件費が高騰し、北米市場だけではなく世界市場を念頭に置いた予算組みをしなくてはいけなくなっている。ハリウッドで企画制作された作品が世界に出ていく流れの一歩先を行くのが、韓国のローカル作品がグローバルでもヒットした『イカゲーム』だ。次にこの流行に乗るのはどの言語、どこの国の作品か。各ストリーミングサービスは世界各国でローカルコンテンツの制作に余念がない。アメリカ制作だが韓国や日本といったアジア市場を意識したApple TV+の『パチンコ』は、今年のエミー賞ではメインタイトル賞1部門のみのノミネートに留まった。シーズン2に継続されることが決定しているので、今後に期待したい。

 現地時間9月12日に行われる授賞式の模様は、日本時間9月13日8時より、U-NEXTで生中継される予定。先にも述べたように、主要な賞のノミネート作品はほとんど日本でも観られるため、鑑賞した上で受賞予想をすることができる。

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