『わたしは最悪。』で見つめ直す自分自身の人生 ヨアキム・トリアーの原点回帰的な作品に

人生の景色が変わる『わたしは最悪。』

 作家志望の幼なじみの青年2人の明暗を描いた『リプライズ』、麻薬中毒患者の青年が得た外出許可の1日を描いた『オスロ、8月31日』。その2作品に共通していたのは、ノルウェーのオスロという街を舞台に、心に孤独や葛藤、絶望を抱えた青年の心の揺れを、ただ悲観的に描くのではなく、スタイリッシュな演出と独特の語り口、類まれなる映像センスでポップに描いていることだった。

 そんなヨアキム・トリアーが今度は女性を主人公に据え、再びオスロの街を舞台に描いた『わたしは最悪。』。予告編やすでに公開されている本編映像などを観ればわかるように、その映像センスはさらに研ぎ澄まされており(映像はぜひ映画館でご覧いただきたい)、10代の頃からの付き合いだというトリアー監督と共同脚本のエスキル・フォクトとの洗練されたシナリオにはただただ感嘆するばかり。『オスロ、8月31日』に出演したレナーテ・レインスヴェが主人公のユリヤを演じ、『リプライズ』『オスロ、8月31日』の2作品で主演を務めたアンデルシュ・ダニエルセン・リーがその恋人アクセルを演じていることからも、まさにヨアキム・トリアーの集大成的な作品と言えるだろう。

 映画を観終わったあとに自分の人生の景色が変わるような、そんな希望に満ち溢れた映画だ。あなたは最高? それとも最悪?

■公開情報
『わたしは最悪。』
Bunkamura ル・シネマ、ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿シネマカリテほかに公開中
監督:ヨアキム・トリアー 
出演:レナーテ・レインスヴェ、アンデルシュ・ダニエルセン・リー
配給:ギャガ
2021/ノルウェー、フランス、スウェーデン、デンマーク
(c)2021 OSLO PICTURES – MK PRODUCTIONS – FILM I VAST – SNOWGLOBE – B-Reel – ARTE FRANCE CINEMA

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