ヨアキム・トリアー監督が明かす、『テルマ』でホラーに挑戦した理由 「自分の殻を打ち破りたかった」

『テルマ』ヨアキム・トリアー監督が語る

 『母の残像』のヨアキム・トリアー監督最新作『テルマ』が10月20日より公開される。第90回アカデミー賞&第75回ゴールデングローブ賞外国語映画賞ノルウェー代表作品にも選ばれた本作は、ノルウェーのオスロを舞台に、大学生のテルマが同級生のアンニャに惹かれていったことをきっかけに、不気味な自然現象が起きるようになり、やがて思いもよらなかった結末にたどり着く模様を描いた北欧ホラーだ。

 今回リアルサウンド映画部では、メガホンを取ったヨアキム・トリアー監督にインタビューを行い、本作を撮ることになった背景から、ホラー映画のブームについての見解や前作でハリウッドデビューしてから今回またノルウェーに戻って製作した理由まで話を聞いた。

「自分の殻を打ち破りたいという気持ちが強かった」

ーーあなたがこれまでに撮ってきた『リプライズ』『オスロ、8月31日』『母の残像』は、人間ドラマ/青春映画的な側面が強かったので、今回ホラーに挑戦したのは意外でした。新たなジャンルに挑もうという意識は最初からあったんでしょうか?

ヨアキム・トリアー(以下、トリアー):この作品は、まさに最初からそういう意図で作ろうとしたんだ。これまで僕が撮ってきた3作品はヒューマンでクラシカルなタイプのもので、“ヨアキム・トリアー=上品な作品を撮る監督”というイメージがついてしまうようになった。そういう反応を肌で感じて、僕自身もどこかでこれまでの自分の殻を打ち破りたい、そういったイメージから解き放たれたいと思っていたから、違うジャンルにチャレンジしたいという気持ちが強かったんだ。実際に作品を作ってみたら、主人公のテルマも僕と同じようになっていたけどね(笑)。今までの作品ではナチュラリズムや美徳を意識していたんだけど、今回はそういうことに縛られることもなく作ることができたね。

ーーこれまでの作品とは異なる部分があったということですね。

トリアー:その通りだね。共同脚本のエスキル・フォクトと共に、想像力から自然発生的に生まれてくる画を想起しながら、自由に組み合わせて作っていく今回の作業はとても楽しかったよ。実は今回、画コンテ作家と話し合いながら、脚本として言葉にする前にまず先に画コンテを描いていったんだ。だから本当にビジュアル先行型の作品だと言えるね。

ーーエスキル・フォクトとはこれまでの作品でもコラボレーションをしていますよね。彼との作業は具体的にどのようなものなのでしょう?

トリアー:僕の映画において、エスキルは本当に重要な人物。彼とは10代からの付き合いで、それこそ映画や本などについて語り合う友達でもあるし、映画に対する好奇心を分かち合える関係性があるんだ。作業としては、作品を作ろうとなったとき、会わなかった期間にお互いがどういうことに興味を持ったかをまず話し合うんだ。6か月間ぐらいそういう時期があって、いくつか作品になりそうなアイデアが出てきたら、僕は監督としてどれが一番ワクワクできるかを考えて、企画を選ぶ。だいたい彼がそれに同意してくれて、そこからどういうシーンをどう作るか、どういう構造にするかなどを2人で話し合っていくという流れだね。実際に執筆する作業は全てエスキルがやっているよ。

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