庵野秀明の自己言及として読み解く『シン・ウルトラマン』 キーワードは“ブリコラージュ”

『シン・ウルトラマン』庵野秀明の自己言及

庵野秀明が抱える“虚構と現実”というテーマ

杉本:なぜそういうことをするのか。庵野さんの作品には“虚構と現実”といったテーマがよく掲げられているんです。実写映画を撮るときもそうだし、『エヴァンゲリオン』シリーズでもずっとテーマにしてきましたよね。本人のインタビューや対談などでも「自分には偽物しかない」といった趣旨の発言がよくあります。その庵野さんが抱えている“虚構と現実”というテーマを最も映像的に直接表せるのが特撮というジャンルなんじゃないかなと僕は思っています。庵野さんが特撮の魅力を聞かれたときに「本物の中に虚構のイメージが紛れ込んでいることの面白さ。100%虚構じゃないし、100%本物でもない。その中間的な融合した魅力がある」と答えていました。その面白さは今回の『シン・ウルトラマン』でも随所に感じられました。ただ、ちょっと志半ばなのかなという感じもありますが。

渡邉:作中で、ウルトラマンと一体化した神永新二がフランスの文化人類学者、クロード・レヴィ=ストロース著の『野生の思考』を読んでいるシーンがありますよね。この本には、 そのために作られたものじゃない道具や素材をパッチワーク的にあてがって、とりあえずのものを作るという意味の“ブリコラージュ”という重要なキーワードが出てきます。先ほど杉本さんが仰ったように、庵野さんの中では、自分は色々なもののパッチワークでできている。本物みたいなものではなく、『ウルトラマン』のイミテーションや、『ゴジラ』のイミテーションや、『デビルマン』のイミテーションで自分はできているんだという発想が強いんだと思います。それも『シン・ウルトラマン』のコンセプトにすごく近いですよね。もともとある『ウルトラマン』の元ネタをブリコラージュして『シン・ウルトラマン』を作った。つまり本作品は、庵野さんの自己言及にもなっている作品なわけですね。そういうネタをわかりやすいぐらいに作中で出してくるので、そこも観ていて面白いポイントかなと思います。

※フルバージョンはpodcastで

#4 『シン・ウルトラマン』“庵野秀明らしさ”を構成する要素とは?

■公開情報
『シン・ウルトラマン』
全国公開中
出演:斎藤工、長澤まさみ、有岡大貴、早見あかり、田中哲司、西島秀俊、山本耕史、岩松 了、嶋田久作ほか
企画・脚本:庵野秀明
監督:樋口真嗣
准監督:尾上克郎
副監督:轟木一騎
監督補:摩砂雪
撮影:市川修、鈴木啓造
美術:林田裕至、佐久嶋依里
VFXスーパーバイザー:佐藤敦紀
ポストプロダクションスーパーバイザー:上田倫人
アニメーションスーパーバイザー:熊本周平
音楽:宮内國郎、鷺巣詩郎
主題歌:「M八七」 米津玄師
(c)2022「シン・ウルトラマン」製作委員会 (c)円谷プロ
公式サイト:https://shin-ultraman.jp/
公式Twitter:@shin_ultraman

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