坂口健太郎が映画愛をうたう 『今夜、ロマンス劇場で』が描く、“名画との出会い”の歓び

『今夜、ロマンス劇場で』名画との出会い

 本作に登場するお姫様・美雪はモノクロのまま健司の前に姿を現すが、やがてこちら側の世界の衣服とメイクによって色を得る。こうして美雪は現実世界に溶け込むことになるのだが、二人の住む世界はやはり違う。彼女は自分のことを“作られた存在”で、“人間を楽しませるために生まれた”と自覚している悲しき宿命を背負った女性。もし現実世界の人間に触れてしまえば、彼女は消えてしまう。だからしだいに健司と惹かれ合いながらも、二人は触れ合うことができない。健司と美雪の関係は「恋愛」のかたちを取っているが、その根底にあるのは人が人を想うこと、何かを強烈に想うことの美しさだ。この「何か」を「映画」に置き換えてみるとしっくりくる。本作は、映画を愛する青年と映画の中のお姫様の恋物語という設定を借りて、“映画への愛”を高らかにうたっているのである。「ロマンス劇場」の支配人(柄本明)の「人の記憶に残る映画なんてほんのわずかだ」という言葉がとても印象深い。健司はそんな自分にとっての“名画”に出会ったのだ。

 当然ながら私たちは、実際に映画の中の登場人物と一緒になることはできない。しかし、スクリーンを見上げている間は確実に同じ時間を過ごしているし、映画が終わってから“その後の物語”を想像するのは観客の自由。本作はそんな映画の持つ根源的な魅力(=魔力)を表象しているように思う。健司の姿を見ていると、映画というものが観客の人生にいかに影響を与える魔力(=魅力)を持っているものなのかと改めて気づかされる。本作はこの誰しも経験する事象を、荒唐無稽な展開とともに切実に訴えているのだ。

■放送情報
『今夜、ロマンス劇場で』
フジテレビ系にて、6月27日(月) 21:00~23:28放送(※一部地域を除く)
出演:綾瀬はるか、坂口健太郎、本田翼、北村一輝、中尾明慶、石橋杏奈、西岡徳馬、柄本明、加藤剛
監督:武内英樹
脚本:宇山佳佑
音楽:住友紀人
主題歌:シェネル「奇跡」(ユニバーサル ミュージック)
(c)2018 映画「今夜、ロマンス劇場で」製作委員会

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「作品評」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる