『メイドインアビス』が名作な理由 音楽でアビスを表現するケビン・ペンキンの劇伴に注目

 アニメ『メイドインアビス』のTVシリーズ第2期である「烈日の黄金郷」が、7月6日から放送開始される。本作は、つくしあきひとによる漫画『メイドインアビス』(竹書房)のアニメ化作品であり、2017年のTVシリーズ第1期と2020年の劇場版作品の続編だ。アニメ化されてから5年の月日が経っているが、本作が注目を集め続け続編を心待ちにしているファンがいるのは、その独特な世界観や隠された謎が徐々に明らかとなるストーリー展開のみならず、アニメーション作品として非常に優れている点にもあるだろう。

『メイドインアビス』
アニメ『メイドインアビス』公式サイトより

 本作は、「アビス」と呼ばれる深さの分からない縦型の大穴へ、母を探しに冒険へ行く主人公の少女・リコと仲間たちの活躍が主軸の物語。“行って帰って来る”ことが王道の冒険譚であり少年少女の成長譚でもあるが、本作の冒険先であるアビスは深く潜れば潜るほど、人間は帰還が困難になってしまう。さらに、そもそも人がアビス内で無事に生活を送ることすら困難な状況であるため、まさに命懸けの冒険譚を私たちは観ることになるのだ。一方、残酷で獰猛で時にかわいい生物や、自然豊かで美しい情景が広がるアビス内は非常に魅力的であり、ジブリ作品『風の谷のナウシカ』に登場する「腐海」を彷彿とさせる。

 そんな独特の世界観を持つ本作をアニメ化する上で重要なのが、かわいらしいメインキャラクターを丁寧に描く作画力に加え、自然豊かなアビスを表現する背景作画だ。作中の時間軸で生活している人間たちの中には、アビスの攻略を目的とする探窟家と呼ばれる職業に従事している者がいる。探窟家によってアビス内が調査されてはいるものの、あまりに不可侵性の高い性質上それほど攻略が進んでいないのが現状だ。それ故にアビス内は素晴らしい自然を多く維持しており、美しさを保っている。

 広大な空間と鮮やかな草木や花々、澄んだ川などの自然がアニメ版では多彩な色彩と空間の広さ、光の入れ方によって巧みに演出されている。また、アニメ作品の強みである音楽にもこだわっており、環境音をイメージした楽曲制作によりアビスの広大な自然や過酷さを表現するのに一役買っているのだ。

 アニメ『メイドインアビス』シリーズで劇伴を務めているのは、オーストラリア出身ロンドン在住のケビン・ペンキンであり、音楽プロデューサーを務める飯島弘光とセッションを重ね、美しい音楽が制作されている。ペンキンは本作の他、2018年にリリースされ大きな話題を集めたインディーゲーム『Florence』や、アニメ『盾の勇者の成り上がり』シリーズなどでも劇伴を担当。『メイドインアビス』TVシリーズ第1期が放送された2017年の時点で、日本のみならず海外でも劇伴が高く評価され注目を集めた。また、『メイドインアビス』と『Florence』で英国アカデミー賞にノミネートされている。

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