『シン・ウルトラマン』『トップガン』が話題の今、再評価したい『ULTRAMAN』
5月に『シン・ウルトラマン』『トップガン マーヴェリック』という2つの作品が公開され、全国劇場が大きく盛り上がっている2022年。かたや1966年に放送された国民的テレビ作品『ウルトラマン』(TBS系)のリブートであり、かたや1986年に公開された大ヒット映画『トップガン』の続編に当たる。リアルタイムで観ていた世代や、往年のファンに刺さる要素を含みつつ、新規層にまで支持を広げながらヒットを飛ばしている、今年を代表する2作だと言えるだろう。
そんな中、にわかに再評価の機運が高まっている1本の映画がある。それが、2004年公開の映画『ULTRAMAN』だ(作品名だけで検索すると別のアニメ版が出てくるため、「映画 ULTRAMAN 2004」などで検索するのがオススメ)。今年5月13日の『シン・ウルトラマン』公開後まもなく、特撮ファンを中心に『ULTRAMAN』の話題がひっきりなしにSNSで上がり、トレンド入り。主要な動画配信サービスではほぼ配信されていないこともあり、Amazonの「特撮・戦隊・ヒーロー」カテゴリの売れ筋ランキングで本作のDVDが1位を獲得した(6月中旬現在も1位を継続中)。キャストやスタッフがその喜びをSNSに投稿した後も、5月27日の『トップガン マーヴェリック』公開が新たな追い風となり、『ULTRAMAN』を話題にする声は後を絶たない。
別所哲也 も、ウルトラマン ULTRAMAN でした!かつて!#シンウルトラマン #別所哲也 #jwave # #ohayomorning pic.twitter.com/XlTvcLYpjn
— 別所哲也 (@besshotetsuya) May 23, 2022
銀色の流星。18年ぶりに再び大空を飛べました。ありがとう。 pic.twitter.com/0uxOjrUUh3
— 長谷川圭一 (@dinahasegawa) May 26, 2022
初代ウルトラマンのリブートという同じお題に取り組んだ作品でしたね。当時大人も楽しめるウルトラマンということが伝わり切らずに公開されてしまったので、シンウルトラマンの勢いで観て貰えると嬉しいです😊 https://t.co/oeUOwK7zhu
— 小中和哉 (@kazuyabear) May 24, 2022
では、なぜ18年前の映画『ULTRAMAN』にスポットライトが当たっているのか。それはひとえに、『シン・ウルトラマン』と『トップガン マーヴェリック』、両方に通ずる要素を含む作品だからだ。
本題に入る前に『シン・ウルトラマン』について振り返っておこう。劇場で発売されたデザインワークス内の企画案にも記されているように、本作は「違和感なく現代に即した大人向けエンターテインメント、特撮映像だからこそ描ける『夢と現実の共存』」を目指した作品である。企画・脚本を庵野秀明が、監督を樋口真嗣が担い、オリジナルの『ウルトラマン』5話分のエピソードを土台にしながら、緻密なギミックで練り上げられたストーリー構成。タイトルの「シン」には「新」や「真」だけでなく、「神」「信」「心」の意味も込められているだろうことは映画を観ればわかるが、そうしたウルトラマンや怪獣(禍威獣)、宇宙人(外星人)の行動に別角度から解釈を与えているのが『シン・ウルトラマン』の面白さである。なぜネロンガは電気を食べるのか。なぜメフィラスはそんなに地球を欲しがるのか。そして、ウルトラマンとはいったい何なのか。『ウルトラマン』を観ていただけでは不明瞭だった“個々の事情”に対して、できるだけ解像度を高めるべくディティールの説明がなされているのは、『シン・ウルトラマン』を観て大きく感心したところだ。
と同時に『シン・ウルトラマン』には拭い去れない疑問点もある。例えば、あまりにも初代の『ウルトラマン』に忠実すぎて、肝心なコアターゲットであるリアルタイム層/ファン層へのサプライズが少なかったこと。5話分のTVエピソードを切り貼りしたため、展開が矢継ぎ早すぎて、重きを置くべきポイントが見えづらいこと。ウルトラマンに多くの意味性が付与されすぎてトゥーマッチ感が否めないこと、などが挙げられる。“庵野映画”として観るか、ウルトラマン作品として観るかで評価も変わるとは思うが、大々的にウルトラマンを冠した映画として、そもそも今作がどれだけ「シン」としての役割を果たせていたのかという疑問も浮かぶ。意図的なオマージュは別として、『シン・ウルトラマン』には「すでに『ウルトラマン〇〇』で観たあのシーンっぽいな」と感じる箇所が散見された。戦闘シーンにおいても『ウルトラマンオーブ』(2016年)や『ウルトラマンZ』(2020年)といった近年評価の高い本家シリーズの方が、よっぽどカタルシスが高かったと言える(『シン・ウルトラマン』で戦闘シーンが重視されていなかったと言えばそれまでなのだが、それにしてもである)。55年以上に渡ってウルトラマンシリーズはその在り方を更新し続けてきたからこそ、「シン」を打ち出すには、もっと抜本的なストーリーや絵づくりの改革が必要だったのではないか。『シン・ウルトラマン』は間違いなく面白かったのだが、そういった越えられなかった壁もある作品だと感じている。