佐々木希のホラーぶりに背筋が凍る 『やんごとなき一族』健太に訪れたさらなる苦難
突如として泉(佐々木希)の本性が剥き出しになる。しとやかで凛とした女性かと思われていた泉は「パーフェクト」になるために、佐都(土屋太鳳)から健太(松下洸平)を奪いにかかる。佐都の妊娠、健太と泉のキス、そして離婚の危機と衝撃の展開を迎えた『やんごとなき一族』(フジテレビ系)の第7話では、背筋も凍るような深山家の闇が描かれる。
佐都と健太の間には第一子が。しかし佐都は“深山の家の子”をお腹に宿したために、深山家の地獄を知ることになる。妊娠中の佐都にはずっと“お産扱い専門”のお手伝いがつきっきりでサポートをするが、口をひらけば「この子は深山家のお子様なのだから」と小言ばかり。さらに環境大臣に就任した父親の隆(篠井英介)から「パーフェクトの呪い」をかけられた泉はプレッシャーに押し潰されそうに。完璧を極めたい泉にとって、深山家との縁にもなる健太は何がなんでも手に入れたい存在だ。そこで泉は、佐都が妊娠中にもかかわらず健太にモーションをかける。健太の温泉事業のための出張先に無理やり乗り込み、混浴したかと思えば、湯あたりで倒れた健太に強引にキスをするなど、おぞましいやり口で佐都から健太を奪おうとするのであった。
佐々木希が演じる泉のあまりのホラーぶりに空気が凍りついた。妊娠中の佐都にも容赦無くマウントをとり、あの美保子(松本若菜)にすら動じないメンタル。そして取り憑かれたように「パーフェクト」にこだわる鬼気迫る芝居は、視聴者にとってもインパクトの大きいものになっただろう。完璧な女性である泉像をぶち壊し、完璧を追い求めるあまりに狂ってしまった泉へと変貌させた佐々木の存在感には目を見張るものがあった。これまで佐都と健太が相思相愛で暖かな愛情表現のシーンを積み重ねてきただけに、泉が強引に気持ちをぶつけるグロテスクさは余計に印象深いものとなる。泉の存在は本人の意思や執着だけでなく、まわりの権威を持った人間の私欲にも塗れていることが、この作品の闇深い構造だろう。気持ちだけでなくそこに利権が絡んだ時、それでも愛を貫けるのか。佐都と健太を信じたい。
加えて第7話では、健太にさらなる苦難が訪れる。苦しい状況を打破しようともがいているのは佐都だけではない。健太もまた深山家という大きな壁に立ち向かっている最中であり、過去に恋をした女性から異様な執着を持たれ、うまくいっていたはずの事業まで反故にされることに。少しでも自分の意思を通そうとするたびに、大きな権力に潰される屈辱は相当なものだろう。その中でも真っ直ぐ佐都を想い、自尊心を欠くことなくひたむきに努力する姿に、佐都が夢中になった健太という男の本質が表れているように感じた。キッパリとした口調でためらいなく泉を跳ね除けられる強さ、そして自分の力で事業を立て直すと権力に屈しなかった頼もしさには、まさに劇中で語られる「王子様」のようなヒーロー像を投影させてしまう。松下洸平が見せる実直で誠実な雰囲気がそのヒーロー像にまさにマッチしており、私たちはますます深山健太に夢中になっていくのだ。
泉の暴走はとどまるところを知らない。さらに侮辱され続ける佐都を心配した母の良恵(石野真子)が健太に別れてほしいと頼むなど、事態はさらに悪化するばかり。だが、佐都と健太が諦めない限り、そこには必ず幸せな未来があるだろう。二人ならなんとか切り拓いてくれると信じて次週を待ちたい。
■放送情報
木曜劇場『やんごとなき一族』
フジテレビ系にて、毎週木曜22:00~22:54放送
出演:土屋太鳳、松下洸平、尾上松也、松本若菜、渡邊圭祐、松本妃代、馬場ふみか、佐々木希、石野真子、倍賞美津子、木村多江、石橋凌ほか
原作:こやまゆかり『やんごとなき一族』(講談社『Kiss』連載)
脚本:神森万里江、青塚美穂
演出:田中亮、三橋利行、水戸祐介
音楽:木村秀彬
主題歌:milet「Walkin’ In My Lane」(SME Records)
挿入歌:wacci「恋だろ」(Sony Music Labels)
プロデュース:宋ハナ
制作プロデュース:古郡真也
協力プロデュース:三竿玲子
制作協力:FILM
制作・著作:フジテレビ
(c)フジテレビ
公式サイト:https://www.fujitv.co.jp/yangoto
公式Twitter:@yangoto_fuji
公式Instagram:@yangoto_fuji