『鎌倉殿の13人』菅田将暉の義経はあまりに見事だった 頼朝の慟哭が切なく響く

菅田将暉の義経はあまりに見事だった

 『鎌倉殿の13人』(NHK総合)第20回「帰ってきた義経」。源義経(菅田将暉)は京を離れ、奥州へ逃れた。しかし義経を温かく迎え入れた奥州の覇者・藤原秀衡(田中泯)が程なくして亡くなる。義経の才を恐れる頼朝(大泉洋)は、北条義時(小栗旬)に藤原国衡(平山祐介)・泰衡(山本浩司)兄弟の仲の悪さにつけ込み、義経を討つよう命じる。

 自らの手を汚さずに義経を討つため、策を巡らす義時の冷たく暗い眼差しや、数々の暗躍で視聴者をゾッとさせてきた善児(梶原善)の言動にも魅了されたが、第20回で何より印象深かったのは、義経と彼をとりまく人々が見せた「覚悟」である。

 まずは石橋静河が演じた静御前。下手な舞を披露すれば見逃されるかもしれないという場面で、静は目を閉じ、「生きたければ、黙っていろ」という義経の言葉を思い出す。静は華麗な舞を披露することで、自身が静御前である証を見せた。舞を終えるとき、力強く頼朝を捉えた静の目に、義経を慕う「女の覚悟」が見て取れた。石橋は、第17回の初登場時にはその華麗な舞で義経を魅了し、かと思えば「御曹司さん、全然釣れへーん!」とリラックスした様子を見せたり、京では里と火花を散らしたりと、さまざまな顔を見せてくれた。義経との子が男児だったがゆえに、その結末は心苦しいものだったが、義経との関係性を印象づけるキャラクターとなった。

 義経の正妻・里(三浦透子)にも彼女なりの覚悟が見えた。泰衡勢が迫りくる中、里は義経に、京で義経を襲った刺客を手引きしたのは自分だと明かす。涙を浮かべながら、義経を見つめる表情が悲しい。里が静を殺そうとしていたこと、あの刺客が兄の策ではなかったことに義経は冷静さを失い、感情のままに里に手をかけた。けれど里は息絶える直前、悲しげだが穏やかな表情だった。義時と義経がいる場に居合わせ、静の話を聞いたときから真実を打ち明ける覚悟を決めていたのだと思う。静のことは憎かったが、義経への愛ゆえに義経を苦しめたことを悔いていたようにも見える。あまりにも切ない最期だった。

 義経と近しい人物は正妻や愛妾だけではない。弁慶(佳久創)もまた、最期まで義経を献身的に支え続けた。泰衡の手勢がやってくるのを待つ間、義経と弁慶の会話は、義経が初登場した第8回となんら変わりなく、和気あいあいとした雰囲気が漂っていた。泰衡勢を足止めするため、館を出る弁慶に、義経は「武蔵坊。世話になった」と伝える。すると弁慶は、少し間を置いた後、気持ちの良い笑顔を浮かべて「やめてください」とだけ言った。本作では、義経と弁慶の出会いは描かれていないが、このやりとりだけで信頼の深い2人の関係性が伝わってくる。最期を迎えることを察してもなお、変わらないやりとりをすることが、彼の覚悟だったのではないだろうか。

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