『シン・ウルトラマン』がロケットスタートを決めた要因は? 気になる興行成績の行方

『シン・ウルトラマン』大ヒットの要因

 本作品は『シン・ゴジラ』同様に庵野のイメージが大きく作中に反映されているものの、樋口監督が思い描くビジュアルも盛り込まれており、それは樋口監督が事前に描いたアイデア手帳の案が本編に反映されている点からも窺える。ウルトラマンと外星人の空中戦や、最強の敵が出現する際のイメージなどがそうだ。開巻早々の『シン・ウルトラマン』のタイトル表示方法、『ウルトラQ』と『ウルトラマン』両作から引用した宮内國郎のBGM、オリジナルデザイナー成田亨の意志に沿った“カラータイマーのないウルトラマン”像などなど、原典へのオマージュが横溢する本編は、それら元ネタを知らない人が観ても楽しめる高いポテンシャルを秘めている。もちろん、トリビアとして『ウルトラQ』、『ウルトラマン』の怪獣、宇宙人の中は、過去の円谷作品で使われた怪獣の着ぐるみを改修した物があるという情報を念頭に観ると一層楽しめるのだが、それもまた特撮マニア視点での鑑賞法かも知れない。

 樋口監督はインタビューの中で「僕らが観て育った素晴らしいものを、どうすれば今の人たちに同じような感覚で伝えられるのかを考えました」(※映画パンフレットより)と語っている。1960年代の技術で撮られ、現代の人たちの目には古く映ってしまう映像を、オリジナルの面白さはそのままに最新の技術で再現した『シン・ウルトラマン』。昭和生まれのヒーローが、そのたたずまいをほとんど変えることなく令和のスクリーンに降臨したことで、また新たな客層を掴んでアップデートを果たしたと言えるだろう。いつまでも古びない我らのヒーロー、ウルトラマンがこれから先も更新してゆく興行成績の新記録を見守りたい。

■公開情報
『シン・ウルトラマン』
全国公開中
出演:斎藤工、長澤まさみ、有岡大貴、早見あかり、田中哲司、西島秀俊、山本耕史、岩松 了、嶋田久作ほか
企画・脚本:庵野秀明
監督:樋口真嗣
准監督:尾上克郎
副監督:轟木一騎
監督補:摩砂雪
撮影:市川修、鈴木啓造
美術:林田裕至、佐久嶋依里
VFXスーパーバイザー:佐藤敦紀
ポストプロダクションスーパーバイザー:上田倫人
アニメーションスーパーバイザー:熊本周平
音楽:宮内國郎、鷺巣詩郎
主題歌:「M八七」 米津玄師
(c)2022「シン・ウルトラマン」製作委員会 (c)円谷プロ
公式サイト:https://shin-ultraman.jp/
公式Twitter:@shin_ultraman

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