『鎌倉殿の13人』の非情な物語からなぜ目が離せないのか 三谷幸喜×大河の抜群の相性

『鎌倉殿の13人』からなぜ目が離せないのか

 義仲はその真っ直ぐさが裏目に出て、頼朝に追い詰められつつある。頼ってきた厄介な男・行家(杉本哲太)を追い出すことはできないと留め、代わりに息子・義高(市川染五郎)を人質として鎌倉にやったこと。家人たちを思って行動を起こしたこと。そして、後白河法皇(西田敏行)と渡り合うにはあまりにも粗野で、頼朝と違い、「都のなんたるか」を知らなかったこと。極めつけは、「法皇様を人質に都を手中に収めた木曽殿の行いを正さねば」という、自分を討ち取るべき確かな「義」を頼朝たちに持たせてしまったことだ。一つ一つの失敗につけこむように、頼朝は着実に義仲を追い詰めていき、待ちに待った戦さの匂いに嬉々とした義経が、義仲を討とうと息巻いている。

 頼朝は頼朝で哀しい人物だ。第9回で「とどのつまりは、わしは一人ということ」と言っていたように、板東武者たちがメインを占めるコミュニティの上に立ち、身内と義時(小栗旬)以外、誰も信じることができない状態にある。「御家人なんざ使い捨ての駒」「自分勝手」「あのお方は、我らを信じていない」と広常、畠山重忠(中川大志)が言ったように、それを人々に見抜かれてもいる。そんな中で、「頭」となり得る男を排除し、思い通りの「手足」となった御家人たちを、「みせしめ」による恐怖と、「所領を分け与える」という褒美の力のみで黙らせたら、この先どうなっていくのか。「一人が死ぬことで、皆が助かる」から黙るしかない組織はどう見ても不健全だ。そして「少しずつ頼朝に似てきている」と三浦義村(山本耕史)に言われた義時はこの先も、多くの純粋ではいられない事態に遭遇し、自分自身が変わっていくことを強いられることだろう。

 さて、我々は、どうしてこの残酷で非情な、正しい人が報われない物語から目が離せないのか。むしろ固唾を呑んで見守ってしまうのか。これぞ時代劇の醍醐味なのかもしれない。戦さのない世を生きているありがたみを感じながら、とことんまで“美しくない”彼らが辿りつく先を見つめよう。

■放送情報
『鎌倉殿の13人』
NHK総合にて、毎週日曜20:00~放送
BSプレミアム、BS4Kにて、毎週日曜18:00~放送
主演:小栗旬
脚本:三谷幸喜
制作統括:清水拓哉、尾崎裕和
演出:吉田照幸、末永創、保坂慶太、安藤大佑
プロデューサー:長谷知記、大越大士、吉岡和彦、川口俊介
写真提供=NHK

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