ユニークさにハマるドラマ『ムーンナイト』 敵との関係性、謎のQRコードまで徹底解説

『ムーンナイト』第2話まで徹底解説

 3月30日よりディズニープラスにて日米同時配信が開始したマーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)ドラマシリーズ最新作『ムーンナイト』。現在、第2話までが配信されました。全6話といわれているので、3分の1ほどのストーリーが進んだことになります。

 エジプトの月の神コンスの力を得た男が白装束の超人ムーンナイト(ナイトはNIGHTではなくKNIGHT、つまり月の騎士です)に変身。邪悪なカルト教団と、彼らが召喚する邪悪なモンスターと戦います。たった2話で評価を下すのは早いですが、抜群の面白さ! 僕のまわりでもハマる人続出中です。そもそもディズニープラス×MCUのドラマは『ワンダヴィジョン』から始まり『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』『ロキ』『ホワット・イフ…?』『ホークアイ』と面白いのですが、今回の『ムーンナイト』は今までのMCUドラマとは違う魅力があるんですね。先にあげた作品たちは今までのMCU映画の“続き”です。要は「『アベンジャーズ/エンドゲーム』以降、あのヒーローたちはどうなってしまったの?」という、ファンの気持ちに応えてくれる作品でした。しかしこの『ムーンナイト』は、そういう今までのMCUとのしがらみは少ない。MCUドラマ初のブランニューヒーローものといってもいい。なので全く予備知識なく楽しめるといえるでしょう。

 そしてこのドラマはちょっと捻った変身ヒーローものです。主人公が解離性同一性障害という設定なのです。一昔前は多重人格と呼ばれていました。この物語の主人公はロンドンに住むスティーヴン(オスカー・アイザック)という心優しきドジな男なんですが、アメリカ人の凄腕傭兵マークという人格も持っている。そしてこのマークがエジプトの月の神コンスと取り引きをしたんです。スティーヴンとしては自分の知らないところで(意識と記憶がとんでいる間に)マークの人格が現れ、いろいろやばい仕事をするなど、コンスの力を得てムーンナイトとして暴れまくっていたわけです。なのでスティーヴンの人格に戻った時は、身に覚えのない、つまりマークがやらかしたトラブルがすべて自分にふりかかってきます。第1話はスティーヴンが自分の中に、もう一人の人格「マーク」がいることに気づき、パニックになるくだりが描かれます。この辺、映画の『メメント』や『トータル・リコール』を彷彿とさせますね。そして第2話でスティーヴンはマークがコンスの力によってムーンナイトに変身することを知ります。

 ややこしいのはムーンナイトというヒーローになるためには、スティーブンが一回マークになり、そのマークがムーンナイトになるという、変心→変身という二段階プロセスを踏むことなんです。そしてムーンナイトが戦う相手はカルト教団を率いるアーサー(イーサン・ホーク)。彼はエジプトの女神アメミットの崇拝者で、その復活を企んでいます。しかもアーサーはかつてコンスに仕えていた身です。つまりムーンナイトの戦いは、コンスとアメミットの代理戦争的な面があります。このコンスとアメミットの設定もユニークです。どちらも悪を赦さない、正義の神様ではあるのですが、コンスは悪人どもに制裁を加える“復讐の神”なのです。まさに「月にかわっておしおきよ!」です。ところがアメミットとその信者であるアーサーは、未来透視して将来、悪事を犯す可能性のある人間はその時点で消してしまえ、という『マイノリティ・リポート』みたいな考えなのです。単純な正義対悪ではなく「結果責任か事前排除か?」という過激な正義同士がぶつかりあうわけです。

 アーサーは魔法を使って魔物を召喚し、スティーヴン/マークに襲い掛かってきます。そこで二人はムーンナイトに変身するわけですね。ムーンナイトは白いバットマンというか、凶暴な月光仮面のようなルックスです。三日月型の手裏剣(コミックではクレセント・ダーツといいます)を投げたり、また相手をボコボコに殴り倒すなど、かなりバイオレンス。面白いのはマークではなくスティーヴンの人格のままムーンナイトに変身しようとすると、白いマスクを被った白ずくめの紳士ヒーロー(コミックではMr.ナイトと呼ばれています)になってしまうのです。

 この第2話はスティーブンがMr.ナイトになって戦いますが、相手を倒せないのでマークに代わり、ムーンナイトに変身しなおして敵を粉砕します。第1話の時は最後の方にちらっとムーンナイトが出るだけでしたが、第2話は大盤振る舞い。Mr.ナイトとムーンナイトの2タイプのヒーローが楽しめる構成になっていました。

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