『ムチャブリ!』で更新される“社長像” 雛子と浅海の対比で浮き彫りになるもの
大牙のことも最初は「嫌い」だとハッキリ言ったり、家に帰ったら一人で仕事の愚痴をブツブツ言いながら、干物女スタイルで缶ビールを飲みふけったり。愚痴や苛立ち、迷いを隠さない。完璧でもなければ、社員を引っ張っていけるほど自分が何か特別なスキルや経験があるわけでもない。雛子という社長はかなり不完全で、人間くさいのだ。しかし、それが現実での人間なのである。
どんなに完璧に見える人でも、人前に出さないだけで不安や愚痴のようなものは抱えていているものだ。私生活も仕事も完璧にこなす社長なんて、それこそドラマの中にしか存在しない。しかし、それを観る我々はたとえフィクションの世界だとしても、たとえば雑誌のモデルが全員細いから「細いことが美しいのだ」という固定観念を植え付けられやすいように、「社長というものは全て完璧でなければいけない」という観念を得やすくなっているのではないだろうか。ドラマの中の雛子のように。
今、ベンチャー企業の若手社長も珍しくない時代の中で、雛子のように20代後半、30代前半で社員を牽引する立場になる人も増えているのだろう。そういった世相を要素の一つに取り入れた『ムチャブリ!』は、それに伴いアップデートされるべき“社長像”というものを雛子というキャラクターを通して提示している。若手で経験がないからこそ完璧でもなければ、むしろ心配して支えなければいけないと思わせるような社長として奮闘する雛子。彼女は、現実で新しいことに挑戦していく若手社長の迷いを肯定するキャラクターのように感じるのだ。だからこそ、クライマックスに近づくにつれて恋愛パートの動きが激しくなってきたドラマの中で、改めて彼女が最終的にどういった“社長”に行き着くのか、その行方にも注目したい。
■放送情報
『ムチャブリ! わたしが社⻑になるなんて』
日本テレビ系にて、毎週水曜22:00〜23:00放送中
出演:高畑充希、志尊淳、松田翔太、夏帆、荒川良々、笠松将、山田真歩、忍成修吾、神保悟志、坪倉由幸(我が家)、片山友希、坂本慶介、松岡広大、優香、草刈民代
脚本:渡邉真子
演出:猪股隆一、狩山俊輔
音楽:河野伸
チーフプロデューサー:加藤正俊
プロデューサー:鈴木亜希乃、柳内久仁子(AX-ON)
制作協力:AX-ON
製作著作:日本テレビ
(c)日本テレビ
公式サイト:https://www.ntv.co.jp/muchaburi/
公式Twitter:@muchaburi_ntv