「『湯あがりスケッチ』穂波の湯あがり日記」第5湯 「無理に恋なんてしなくたって……」

「穂波の湯あがり日記」第5湯

 塩谷歩波の『銭湯図解』を原案としたドラマ『湯あがりスケッチ』が2月3日よりひかりTVにて配信された。全8話で構成される本作は、毎話ごとに今も実際に営業している都内の銭湯と、それぞれのエピソードの鍵となる8人の女性が登場し、銭湯のように心温まる物語が紡がれていく。

 主人公・穂波を演じる小川紗良が、“穂波”として執筆した「穂波の湯あがり日記」が到着。各話で穂波が感じたこと、考えたことが、日記形式で綴られている。

第5湯 女友達と交わす内緒話は格別

 またか、と思わずため息をついた。SNSで目にする同級生の結婚報告。25歳を過ぎたころから、まわりの女の子たちが示し合わせたように次々と結婚していく。噂には聞いていた「結婚ラッシュ」というものが、本当にあるのだと驚いた。もしかして、私だけが誘われていないお見合いパーティーが、秘密裏に開催されているのだろうか……。別に彼女たちを羨んだり妬んだりしているのではなく、素直に幸せを願っているけれど、この流れの圧のようなものには少々くらくらしてしまう。

 恋愛をしてこなかったわけではない。学生時代には、それらしいときめきや付き合いも少しはあった。しかし今の私は、完全にそういった色恋から心が離れてしまっている。なんというか、特定の誰かを深く知ろうとしたり、距離を縮めようと努めたり、そういうことのすべてがちょっとしんどい。銭湯で出会った人たちと世間話をするくらいの間柄が、今はちょうどいい。

 そんなわけで、今日の合コンは正直億劫だった。学生時代から一緒に過ごしてきた朋花(伊藤万理華)と薫子(夏子)が、私を思ってセッティングしてくれたのは嬉しいけれど……。恋愛しなければまともじゃないかのような世の中の空気に、やはりどうしても気後れしてしまう。そんな私を見かねた薫子の決断で、私たちは合コンを抜け出した。そうして行き着いた先は、結局いつも通り銭湯である。

 女友達はいつも何かを共有し、何かを心の内に秘め、その絶妙なバランスを保ちながらつながっている。仕事も恋愛観も全く異なる私たちだけど、だからこそ互いを思いやってくだらない話ができる。同じお湯に浸かれば自然と安らいで、「実はね……」と何かを打ち明けたくなる。銭湯で女友達と交わす内緒話は格別だ。私たちだけの温もりに包まれて、私はようやく、私らしく息をすることができた。無理に恋なんてしなくたって、好きな友達と温かいお湯さえあれば、心は充分にととのうのだ。

■放送情報
『湯あがりスケッチ』
ひかりTVにて、毎週木曜22:00〜配信【全8話】
原案:塩谷歩波『銭湯図解』
監督・脚本:中川龍太郎
出演:小川紗良、森崎ウィン、新谷ゆづみ、村上淳、伊藤万理華、安達祐実、臼田あさ美、室井滋、夏子、中田青渚、成海璃子
(c)ひかりTV
公式サイト:https://www.hikaritv.net/sp/yuagari-sketch/index.html?cid=ent_video_yuagari_sketch_of_6
公式Twitter:https://twitter.com/yuagari_sketch
特集ページ:https://realsound.jp/movie/2022/02/post-960070.html

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