『カムカム』ひなたと五十嵐の恋は少女漫画の王道パターン 2人の今後は錠一郎がカギに?
100年の家族の物語を三世代のヒロインで描くNHK連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』。今週は三代目ヒロイン・ひなた(川栄李奈)と、大部屋俳優・五十嵐文四郎(本郷奏多)の初々しい恋愛模様が描かれ、最初は衝突していた2人が、お互いにかけがえのない存在だと気付いていく展開に。そこで、2人の関係の魅力と今後の展開について占ってみたい。
現在放送中の「ひなた編」では、二代目ヒロイン・るい(深津絵里)の娘であり、父・錠一郎(オダギリジョー)の影響で時代劇好きとして成長したひなたが、「ミス条映コンテスト」に参加し、会場を沸かせたことをきっかけに、大部屋俳優の伴虚無蔵(松重豊)にスカウトされ、俳優ではなく社員として条映太秦映画村に就職。最初はお茶汲みから始まったものの、今では映画村の企画を考えたり、崖っぷちのベテラン女優・美咲すみれ(安達祐実)の稽古に付き添うなど、社員という立場から時代劇や映画村を支える存在となった。そして時代は昭和から平成に突入し、時代劇の仕事は減り、映画村でのひなたの仕事も大きく変化していく。
「ひなた編」のいいところは、祖母の安子(上白石萌音)も母のるいもしっかり者なのに対し、甘やかされて育ったせいか、何事も長続きしない未熟な性格だったひなたが、不器用ながらも相手のために一生懸命になることで成長していく姿だろう。ひなたと五十嵐の出会いを振り返ると、高校3年生になる直前、将来の進路が決まらず、命がけでやりたい夢も目標もなく悩んでいたひなたが、家の回転焼き店の店番をしている時に五十嵐が来店。
安子もるいも、最愛の人と出会ったのは店番をしている時だったが、普通に店員と客としてのやりとりをした先代たちとは違い、五十嵐は、回転焼きを焼けないひなたに対して蔑んだ目で「うそだろ」と苦笑い。お釣りを渡す時に「引き算はできるんだ」と嫌味を言って、ひなたは「なんやあいつ」と腹がたつという、最悪の出会いを果たす。ただ、このツンツン同士だからこそ、共通する時代劇の趣味や、時代劇への思いが本物だったことで徐々に惹かれ合う。そして、負けん気の強さから相手に何かしてやろうという気持ちが、後から恋だと気づき、やがてかけがえのない存在になっていく。
その後、ひなたは五十嵐にとってるいの焼く回転焼きが心の支えだと知り、一生懸命に練習して、大事なオーディションの前に彼のために回転焼きを焼く。自分でも好きという感情に気づいていないひなたの中に、自然と五十嵐を応援したいという感情が生まれ、これまで何事も途中で辞めていた彼女が回転焼きという一つのことをやり遂げる。この不器用な愛情表現を経て、時間はかかったものの、先代2人と共通する「あなたと2人でひなたの道を歩きたい」という人生の目標をやっと見つける。
この距離を縮めていく過程が、王子様系とおてんば娘が恋に落ちていく少女漫画に多いツンデレパターンで、先代の恋愛劇とは異なる面白さがある。
そうした恋愛だけでなく、人として一歩一歩成長していくひなたには、「ダメな子ほどかわいい」と言われるように、三世代見続けてきた視聴者が、親目線で「よくできました」と言いたくなる魅力がある。また、五十嵐も今週はツンデレが加速。ひなたが稽古に付き合うと言ったにもかかわらず、何日も顔を出さなかったことで動揺し、帰りを待ち伏せして、突然ひなたを抱きしめ「ちゃんと毎日顔見せろ、寂しいだろ、バカ」と言って帰って行った。先代の2人の男とは違い、あえて好きとは言わず行動で示す不器用でシャイなところが実に愛おしい。