中川龍太郎監督の変幻自在の演出 『湯あがりスケッチ』は視聴者の心も裸にする

視聴者の心も裸にする『湯あがりスケッチ』

 今回の舞台となった大黒湯は、広大な露天風呂、ハンモックで外気浴を楽しめるウッドデッキ、サウナ、薬湯など種類が豊富だ。穂波たちもまた、ゆっくり湯船につかった後、水風呂ではしゃいだり、「デザート」として外気浴を楽しんだりしている。裸になって、同じお湯を共有するだけで、たちまちほどけていく感情。「なんとなくかわいいなと思っていれちゃった」薫子の二の腕の小さな蝶のタトゥーを揃って見つめることから始まり、3人は、服を着ている時より親密に、いろいろな話をする。

 大学の頃の友達同士である彼女たちの会話を通して気づかされたのは、社会人になって5年も経つと、それぞれを取り巻く環境も人生観も大きく異なっていくのだということ。薫子は既婚者であり、朋花は転職を繰り返し、結婚ではなく、まだ「ダメな男との気軽でダメな恋愛」を楽しみたいと思っている。穂波もまた、会社を辞め、銭湯で働き始めた。それぞれの生き方には、各々の信念と人生哲学を感じさせる。でもだからこそ、既婚者だから誘ってはいけないだろうかという遠慮だったり、自分の生き方を否定されたらどうしようという不安だったりで、言葉を選び、次第に心の距離が生まれてしまいがちなのが「女の友情」である。そんな心に生まれた距離をとっぱらってくれたのが、銭湯の温もりだった。

 一方、タカラ湯では、中田青渚演じるキュートで無敵な「ハタチ」の女の子・リコが転がり込んでくる。芝居のアドバイスを求めつつ、酔っぱらいつつ、5年間恋焦がれ続けるも「芝居やるまでは彼女作らないって決めてる」と譲らない熊谷に果敢にアタックし続ける。「結局、先輩は逃げてるだけじゃないですか。芝居からも恋からも」というリコの言葉を何度も聞き流しながらも、ふと真剣な、こちらの胸を衝くような表情を浮かべる熊谷。その後飲み明かした熊谷と愛之助は、一体どんな話に花を咲かせたのだろうか。

 銭湯という空間は、人の心まで裸にする。このドラマもまた、同様に。

ひかりTVでは『湯あがりスケッチ』をはじめとして、銭湯・サウナを舞台にしたドラマを多数配信中!

■放送情報
『湯あがりスケッチ』(全8話)
ひかりTVにて、毎週木曜22:00〜配信
原案:塩谷歩波『銭湯図解』
監督・脚本:中川龍太郎
出演:小川紗良、森崎ウィン、新谷ゆづみ、村上淳、伊藤万理華、安達祐実、臼田あさ美、室井滋、夏子、中田青渚、成海璃子
(c)ひかりTV
公式サイト:https://www.hikaritv.net/sp/yuagari-sketch/index.html?cid=ent_video_yuagari_sketch_of_6
公式Twitter:https://twitter.com/yuagari_sketch
特集ページ:https://realsound.jp/movie/2022/02/post-960070.html

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