『カムカムエヴリバディ』“幸せ”の形を模索するるい いつの時代も変わらぬ悩み

『カムカム』“幸せ”の形を模索するるい

 『カムカムエヴリバディ』(NHK総合)第14週では、ついに三代目ヒロインのひなたが誕生した。城田優のナレーションにもあったが、その頃の日本は高度経済成長期の真っ只中。戦争により破滅的な被害を受けた日本の経済が急成長し、豊かになった人々の暮らしが物語の至るところに描かれている。

 1970年代に入り、小学4年生となったひなた(新津ちせ)の子供部屋に注目した人も多いだろう。本棚には当時大ヒットした作品を彷彿とさせる少女漫画が何冊もあり、錠一郎(オダギリジョー)の影響で時代劇好きのひなたがアレンジした、リカちゃんと思わしき侍仕様の人形なども飾られている。るい(深津絵里)が回転焼き屋の収入だけで家族3人の生活を賄っているにもかかわらず、ひなたが経済的に苦労した形跡は一切ない。幼い頃から好きなものは人並みに買い与えてもらったことが分かる。

 あかね通り商店街も活気に溢れ、その中で伸び伸びと活発に育ったひなたを見ているだけで何だか安心するのだが、それはるいが生まれた不遇の時代を知っているからだ。るいが物心つき始めた頃、母・安子(上白石萌音)と暮らしていた大阪の家は元々物置小屋だった。雉真の家を飛び出した安子はそこで芋飴やおはぎを売り、るいを女手一つで育てていこうとする。

 安子とるいは再出発を図るために新しい場所へ移動し、お菓子づくりで生計を立てようとしたところまでは同じだったが、時代背景が大きく違う。誰もがその日、暮らしていくだけで精一杯だった戦後。安子はもちろん人の手を借りることは叶わず、いつも幼いるいを背負い、夜なべして芋飴を作っていた姿が印象的だった。どこか街の雰囲気も暗く、ギスギスとしていたように思う。

 一方、るいが回転焼き屋を始めるためにやってきたあかね通り商店街にはいつも暖かい日差しが降り注ぎ、人々も大らかで活発。ご近所さんの森岡(おいでやす小田)や吉右衛門(堀部圭亮)も最初は冷ややかな目で見ていたが、何かあった時は走って報告に来てくれる心根の優しい人ばかりだ。何より京都には、大阪時代からるいや錠一郎を知る一子(市川実日子)という頼もしい助っ人が。彼女の働きで回転焼きは程なく売れるようになり、るいや錠一郎の存在は商店街の人たちに受け入れられた。

 もちろん、安子も大阪でくま(若井みどり)や澄子(紺野まひる)のように厳しい時代の中でも心の支えとなるような人たちに出会っている。特に「あんたらご夫婦がこの街に来はった時は、京都で回転焼き屋さんやなんてどないになるんやろうと思うたけど、立派にようやってはる」と清子(松原智恵子)がるいを褒めた時、大口の注文を得て生活の基盤を固め始めた安子に「あんたがこの子(るい)を背たろうてここへ来た時はどないなるやろと思うたけど、ほんまによう頑張ったな」とくまが言ってくれた場面と重なった。日陰の時もあれば、日向の時もある。もうダメかもと心折れそうな時期を乗り越え、安子もるいも周囲の人にハラハラと見守られながら、少しずつ自分が思う幸せを掴んでいったのだ。

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