『花束みたいな恋をした』から1年 有村架純、主演作『前科者』で時代の先頭に

有村架純、主演作『前科者』で時代の先頭に

 大きな話題を集めた映画『花束みたいな恋をした』(2021年)の“絹ちゃん”役で、時代の代弁者ともいえる存在となった有村架純。あれからちょうど1年の時を経て公開された『前科者』で演じる“阿川さん”役にて、彼女は間違いなく自身をアップデートさせている。この2022年を生きる私たちの、前を歩く存在のように思うのだ。

『前科者』(c)2021 香川まさひと・月島冬二・小学館/映画「前科者」製作委員会

 2021年は、有村が日本のエンターテインメント界のトップランナーであることを完全に証明した1年だった。先に挙げた『花束みたいな恋をした』では菅田将暉とともに“どこにでもいるカップル”に扮し、理想と現実、恋と愛のはざまで揺れる等身大のラブストーリーを展開。坂元裕二によって編み出された物語は多くの観客の共感を呼び、絹や、菅田演じる麦の口にする固有名詞の数々は同世代の者たちにとって馴染み深く、まさに“いま”を感じさせるものだった。同作の公開からしばらくして放送が開始された『コントが始まる』(日本テレビ系)でも有村と菅田は共演。足元がおぼつかない現在と、期待と不安とが入り交じる未来に向かって歩を進める若者たちの群像劇を展開し、厳しい環境下で生きる私たちとの重なりを感じさせたものである。

『花束みたいな恋をした』(c)2021「花束みたいな恋をした」製作委員会

 有村がエンタメ界のトップランナーだといえる根拠は、これだけではない。およそ10年にも及ぶ『るろうに剣心』シリーズの完結編となった『The Final』に初登場し、続く『The Beginning』でヒロインを務めたというのが非常に大きい。特に後者は、シリーズを通して展開してきた物語の“すべてのはじまり”を描いたもの。かつては人斬りであった主人公の剣心が、“不殺の誓い”を立てた経緯がここで明かされた。シリーズを貫く、“剣心が剣心である理由”ーーそれが有村演じる巴の存在だったのだ。さまざまな観点から、この巴という大役に相応しい俳優はかぎられたものだと分かるが、有村は見事に自身の巴像を作り上げてみせた。同作は当初2020年に公開される予定だったものの延期され、これが2021年の有村の存在をさらに強調することとなったのである。そして、第二次大戦下を舞台に若者たちの青春模様を描いた『太陽の子』では、過酷な環境下にありながらも未来を見据える女性を演じ、またも彼女は現在の私たちとシンクロしたように思う。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「アクター分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる