『カムカム』が描く多様な家族の形 「“娘”をよろしく頼みます」竹村夫婦のあふれる愛

『カムカム』竹村夫婦のあふれる愛 

 「三世代の女性たちが紡いでいく、100年のファミリーストーリー」が主題となっている本作だが、るい編に入って“血の繋がり”に限らない、多様な家族の形を提示してくれている。その一つとして描いたのが、るいと竹村夫妻の関係性だった。

 岡山からほぼ身一つで大阪に出てきたるいを、何も言わず受け入れてくれた平助と和子はただの呑気な夫婦ではない。変に気を遣わせないよう常に明るく振る舞いながらも、見えないところで人一倍るいを心配してくれていたことを私たちは知っている。

 かつて「あの子の笑った顔が悲しそうにしか見えへんや」と和子に言った平助が、「Night and Day」に初めて寄り道して帰ったるいの心から楽しそうな表情を見て、嬉しそうにしていたのが忘れられない。

 2人はるいの額に傷があることを知った時も、るいが錠一郎に打ち明けた母親との過去を立ち聞きしてしまった時も、何も知らないふりをし続けてくれた。だから安心して、るいは2人の前でわかりやすく落ち込んだり喜んだりすることができたのだ。どんな時も家に帰れば、「おかえり」と笑顔で迎えてくれる人がいる。それはるいにとって、どれほど心強かったか。一方でるいの存在も2人の生活に潤いを与えており、彼らは毎日食卓を囲みながら幸せを形作っていった。

カムカムエヴリバディ

 そして、同じ体験を実は錠一郎もしていた。およそ3カ月に及ぶレコーディングのため、ひとまず一人で東京へ向かうことになった錠一郎の荷造りを手伝っていたるいは、ジャズ喫茶「Dippermouth Blues」のマッチを見つける。そのお店の名前に覚えがあった。なぜなら、幼い頃に母・安子(上白石萌音)とレコードを聴いた思い出の場所だったからだ。「マスターの名前はたしか、定一さんやった」。戦争孤児だった錠一郎はその定一(世良公則)に拾ってもらったのだという。ようやくるいと錠一郎の過去が繋がった。

 物置き小屋の中で空腹と寒さに震える幼き日の錠一郎に、食べ物を分け与える定一。2人の頭上には、るいと竹村夫妻が囲む食卓のようにまあるいお月様が浮かんでいた。

■放送情報
NHK連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
※土曜は1週間を振り返り
出演:上白石萌音、深津絵里、川栄李奈ほか
脚本:藤本有紀
制作統括:堀之内礼二郎、櫻井賢
音楽:金子隆博
主題歌:AI「アルデバラン」
プロデューサー:葛西勇也・橋本果奈
演出:安達もじり、橋爪紳一朗、松岡一史、深川貴志、松岡一史、二見大輔、泉並敬眞ほか 
写真提供=NHK

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