平手友梨奈が“人馬一体”を体現 『風の向こうへ駆け抜けろ』が本当に描きたかったこと
この『風の向こうへ駆け抜けろ』では「人馬一体」という言葉が何度も叫ばれる。瑞穂がフィッシュアイズと心を通わせ、涙を流しながら抱きしめる姿は、騎乗だけでない、騎手と馬の一体感を表した感動的なシーンだ。そして、そんな人馬一体という言葉を思い浮かばせるもう一人の人物が木崎だ。彼は、子供の頃に家庭内での暴力を受けたことから、声が出せなくなった。そんな木崎と境遇が似ていたのがフィッシュアイズだった。無愛想ではあるが、誰よりも熱心に面倒を見て馬と心を通わせていく姿は、瑞穂と被るところもある。
そして、次第に木崎は瑞穂とフィッシュアイズがレースを勝ち上がっていく姿に、自信と声を取り戻していくのだ。ずっとメモ帳を使った筆談のみだった木崎が桜花賞ではついに「行け~!」と声を張り上げる。演じる板垣李光人は、表情のみで彼の複雑な感情を伝えることが要求される難しい演技だったことだろう。セリフ的にはその一言のみであるが、木崎もまた葛藤し奮闘してきた一人なのだと感じた。
オンエア翌日の12月26日には、中山競馬場で中央競馬のG1レース・有馬記念が開催される。出馬表には『風の向こうへ駆け抜けろ』にゲスト出演していた武豊の名前も。人馬一体のレース──そこには一人ひとりのドラマがあることを忘れてはならない。
■放送情報
『風の向こうへ駆け抜けろ』
NHK総合にて、12月18日(土)、12月25日 (土)21:00~22:13放送(前・後編)
出演:平手友梨奈、中村蒼、板垣李光人、降谷建志、奥野壮、石井正則、高橋侃、剛力彩芽、池内博之、玉山鉄二、小沢仁志、大地康雄、奥田瑛ニほか
原作:古内一絵『風の向こうへ駆け抜けろ』
脚本:大森寿美男
音楽:中島ノブユキ
制作統括:内藤愼介(NHKエンタープライズ)、岡本幸江(NHK)
演出:西谷真一(NHKエンタープライズ)
写真提供=NHK