平手友梨奈のひたむきな努力がにじむ 『風の向こうへ駆け抜けろ』は“攻めた”内容に

『風の向こうへ駆け抜けろ』は攻めた内容に

 平手友梨奈が主演を務めるドラマ『風の向こうへ駆け抜けろ』(NHK総合)が、12月18日、25日に前後編で放送。

 本作は、作家・古内一絵の同名小説を実写化した人間ドラマ。脚本は朝ドラ『なつぞら』(NHK総合)をはじめ、映画『風が強く吹いている』『アゲイン 28年目の甲子園』といったスポーツを題材とした作品も手がけている大森寿美男が担当している。

 前編で描かれるのは、女性騎手・芦原瑞穂(平手友梨奈)の挫折と奮起の物語だ。瑞穂は中央競馬から地方競馬での再スタートを試みるも、散々なデビュー戦となってしまう。しかも、瑞穂を迎え入れてくれた緑川厩舎は馬主とのいさかいから馬を引き上げられ廃業の危機に。しかし、調教師で元G1ジョッキーだった緑川(中村蒼)は、瑞穂のひたむきな姿に「俺が一番なめていたのは……競馬だ」と再び希望を見出し始めるのだった。

 筆者は、原作は未読であるが今回の前編を観て、NHKとしてはなかなかに攻めた内容で少々驚いた。その容姿からアイドル扱いされる女性騎手としての立場、女人禁制の伝統をいまだ重んじる厩務員のカニ爺(大地康雄)、肉体関係との引き換えに中央競馬へのカムバックを約束してくる馬主・月芝(池内博之)という生々しい描写に、これを平手友梨奈が演じるのか……と途中までは正直モヤっとしていた。しかし、瑞穂に対して「女だから」と偏見を持っていた緑川やカニ爺がいつの間にか彼女を見直し、夢を託していく姿は、黒のオセロが一気にトントントンと白へと反転していくような、そんな爽快さも持ち合わせているように感じた。

 瑞穂を演じる平手は、初の女性騎手という役柄であり、NHKドラマ初出演にして初主演を務めている。テレビドラマとしては『ドラゴン桜』(TBS系)以来の出演だ。今作の目玉はなんといっても乗馬シーン。平手が馬に乗るのは今回が初めてであり練習はクランクインの2か月前から、さらに撮影はそこから約2カ月続いたという。女性騎手として馬に乗れることは当たり前のように描かれるが、そんなワンシーンにもひたむきな努力が重ねられている。物語上でも瑞穂の勝てない原因のイップスとして告げられる中央競馬レースでの落馬も鮮烈に印象に残るシーンだ。前編ラストで緑川厩舎が新たに迎え入れる暴れ馬・フィッシュアイズに乗ろうとする場面でも瑞穂は落馬する。特に後者は実際に演じる平手にも恐怖心が植え付けられそうな、観ているこちらが心配になる一場面だ。

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