低空飛行の『ミラベルと魔法だらけの家』 配信シフトの1年間でディズニーが失ったもの

配信シフトの1年間でディズニーが失ったもの

国内映画興行ランキング(2021年12月11日〜12月12日)

 先週末の動員ランキングは『あなたの番です 劇場版』が土日2日間で動員24万4000人、興収3億4200万円をあげて初登場1位を獲得した。初日から3日間の累計では動員32万857人、興収4億4718万6350円。80年代のおニャン子&とんねるずブームのリアルタイマーとしては、2020年代になってもこの国では秋元康コンテンツ人気が継続していることに感心するやら呆れるやら、といったところ。世間的には低迷期とされているプレAKB期の00年代前半も、映画ではちゃっかり『着信アリ』シリーズを当てていたわけで(しかもハリウッドでもリメイクされて日本版の何倍も稼いでいる)、本当に大したものです。

 さて、今回取り上げるのはディズニー・アニメーション・スタジオによるオリジナル・ミュージカル映画『ミラベルと魔法だらけの家』だ。11月26日に公開された同作は、初週2位、2週目3位、そして先週末4位にランクインしている。ランキング的には上位で粘っているようにも見えるが、その数字は公開からの17日間で動員41万183人、興収5億2243万9250円と低調で、このままだと最終興収で10億円にも届かないかもしれない。比較として挙げると、同じバイロン・ハワード監督&ジャレッド・ブッシュ監督による『ズートピア』(2016年)の最終興収は76.8億円、ディズニー・アニメーション・スタジオのオリジナル・ミュージカル映画としては前作にあたる『モアナと伝説の海』(2016年)の最終興収は51.6億円、パンデミック前の同時期、つまりディズニーがストリーミングサービス事業に大きく舵を切る前の最後のクリスマスシーズンに公開された『アナと雪の女王2』(2019年)の最終興収は133.6億円だ。

 本コラムで再三取り上げてきたように、ディズニーは2019年11月に自社のストリーミングサービス、ディズニープラスをスタート。パンデミックによる公開延期を経て、2020年9月に『ムーラン』をディズニープラスで配信公開(配信当初はプレミアアクセス)したのを皮切りに、配信限定公開、配信公開と同時の劇場公開、配信公開の前日に劇場公開という段階を経て、『ムーラン』配信のちょうど1年後の今年9月に公開された『シャン・チー/テン・リングスの伝説』でようやくこれまで通りの劇場先行公開に戻った。もっとも、その『シャン・チー』も約9週後の11月12日にはプレミアアクセスではない通常配信がスタートしていて、本国のディズニーは、今後は最短でも劇場公開から45日間を劇場独占期間とする基本方針を発表している。

 今回の『ミラベルと魔法だらけの家』は、そのようなディズニーが事業全体の構造転換を経た後の、初めてのクリスマスシーズンの劇場公開作品となったわけだが、その結果が前述した数字だ。ディズニーのクリスマスシーズンのアニメーション作品の興行規模がここまでシュリンクしてしまったことが日本の映画興行、とりわけ外国映画興行に与える影響は甚大だ。過去に興収100億円を超えた外国映画は27作品、そのうちディズニー作品は12作品、現在はディズニー傘下のFOX作品も含めると17作品。パンデミック直前の2019年には、1年だけで3作品(『アラジン』と『トイ・ストーリー4』と『アナと雪の女王2』)が興収100億超えという快挙を成し遂げたばかりだったが、現在のディズニーの上映&配信ルール下で新たに新作がそこに名を連ねるイメージは、正直なところまったく湧かない。

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