猪塚健太、15年間の役者人生の節目を迎えて 「ようやく“こっからでしょ”と思えるように」
転機になった『娼年』と『ポルノグラファー』
――舞台に立てる喜びを改めて感じられたと。作品面での転機についてはいかがでしょうか?
猪塚:映画『娼年』とドラマ『ポルノグラファー』がだいたい同じくらいの時期だったんですけど、どちらの作品でも、僕の中で漠然と抱いていた“やりたい役”を演じさせていただくことができました。人間の欲をさらけ出す役というか、色んなことを我慢しながら生きている世の中で、お芝居でそこを解放するような役をずっとやりたいと思っていたし、そういう役ができる役者になりたいと思っていたので、すごく嬉しかったです。
――『娼年』は舞台化(2016年)の後に映画化(2018年)され、アズマ役に続投されました。
猪塚:舞台のオーディションを受ける時に、原作を読んで「求めていた役だし、絶対にやりたい!」と思ったんです。ありがちですけど、「これ受からなかったら役者やめます」みたいな(笑)。そのくらいの意気込みでオーディションを受けましたし、作品への思い入れもあったので続投は本当に嬉しかったです。当時は映像作品に慣れていなかったので、正直できるかどうか不安でした。でも、舞台で何カ月もやってきた役だったので、「もう役はできてるんだから」と自分に言い聞かせて撮影に臨みました。
――『娼年』が、舞台から映像作品に活躍の場を広げるきっかけに?
猪塚:『ポルノグラファー』も、もともと劇団の芝居を観てくれていたプロデューサーさんが『娼年』を観て、「こういう役もいけるんだ」とキャスティングに名前を挙げてくださったんです。僕のことをたくさんの方に観てもらえるきっかけにもなりましたし、映像の世界に足を踏み入れる良いきっかけにもなった作品だと思います。
――一方の『ポルノグラファー』は、ファンの存在を強く感じる作品だったのではないでしょうか。
猪塚:そうですね。劇団をやっていた頃は、公演でファンのみなさんの顔を見ることができたのですごく近くに存在を感じていたんです。でも『ポルノグラファー』は映像作品なのに、舞台のようにファンの方を近くに感じることが多くて。みなさんの後押しで作品が広がっていく経験も初めてでしたし、ファンの熱い想いを感じる作品でした。
――竹財輝之助さんとの出会いも、きっと大きいですよね。
猪塚:これだけ濃厚にお芝居させてもらった方はいないですし、お兄ちゃんのような存在というか。もう、ただの先輩ではない感じですかね。僕はなかなか人に心を許すことが難しいんですけど、竹財さんには何でも相談したい。偶然撮影しているスタジオが一緒だってわかったりすると探しちゃいます(笑)。本当に大切な人です。
――作品もご覧になります?
猪塚:もちろん、観てます。『年の差婚』(MBS/TBS)とか、イケオジだな~って(笑)。若く見えるのに、その歳の色気もあるし……セクシー先輩ですよね。生まれ持っているものだから、真似しようとしてもできないんですよ。
――セクシー先輩(笑)。そんな竹財さんとの出会いにもなった『ポルノグラファー』ですが、出演前と後では、役者としての心持ちに変化も?
猪塚:すごくあります。『ポルノグラファー』シリーズは、ドラマから映画まで3作品続きました。3年に渡って同じ役をやらせていただくのも初めてで、じっくりと役に向き合って、演じられました。映像の芝居は経験が少なく以前は不安が大きかったですが、この経験を経てほんの少し自信をつけさせてもらったなと思います。