『日本沈没』注目される背景に震災とパンデミック? 提示される多くの“IF/もしも”

『日本沈没』が描く多くの“IF/もしも”

 こんな時でも頑なに日本沈没が起きない方にベットしてしまう里城。地盤である経済界と企業にとって日本沈没が起きないに越したことはないが、それは希望的観測にすぎない。だが、あろうことか里城は自身の願望を補強する方向にひた走る。官房長官の長沼(杉本哲太)に田所とDプランズ社の調査を命じ、田所の排除を図った。ちなみに小松左京の原作には「D計画」なる用語が登場する。D計画は日本沈没説を検証する政府の極秘プロジェクトで、Dの計画(プラン)をめぐる本作との違いも興味深い。話を戻すと現実逃避的な里城の態度は政治家としての限界である一方、根回しやパワーゲームに長けた一面から平時に力を発揮するタイプとも考えられる。

 「第二章・日本沈没篇」では復興から移民計画へとテーマがシフトした。もし日本が沈没したらどこに住めばいいのか? どうやって1億2千万人を他国へ円滑に送り届けるか? 海外へ移住したら日本人でいられるのか? 日本という国はなくなってしまうのか? 幸いにも日本では有史以来、大規模な海外移住を経験せずに済んできたが、国境が地続きの国では移民や難民は重要な外交課題だ。関東沈没後の復興計画もそうだが、本作ではまだ起きていない多くの「IF/もしも」が提示され、観ている側も普段とは違う頭の使い方を強いられる。それにもかかわらず本作が注目を浴びる背景に、大震災とパンデミックがあると考えられないだろうか? 災害を実体験し、政治が自分たちの生活に密接に関連していることでこの国の未来に関心を抱く人が増えた。そのことが本作の受容のされ方にも影響していると思われる。

■放送情報
日曜劇場『日本沈没―希望のひと―』
TBS系にて、毎週日曜21:00~21:54放送
出演:小栗旬、松山ケンイチ、杏、ウエンツ瑛士、中村アン、高橋努、浜田学、河井青葉、六角慎司、山岸門人、竹井亮介、高野ゆらこ、与田祐希(乃木坂46)、國村隼、小林隆、伊集院光、風吹ジュン、比嘉愛未、宮崎美子、吉田鋼太郎(特別出演)、杉本哲太、風間杜夫、石橋蓮司、仲村トオル、香川照之
ナレーション:ホラン千秋
原作:小松左京『日本沈没』
脚本:橋本裕志
プロデュース:東仲恵吾
製作著作:TBS
(c)TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/nihon_chinbotsu_tbs/
公式Twitter:@NCkibou_tbs
公式Instagram:nckibou_tbs

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