阿佐ヶ谷姉妹を“わかってる”作り手たちだからの『のほほん』 原作の魅力を見事に映像化

阿佐ヶ谷姉妹の魅力を見事に映像化

 第2話は、先にも書いた通り、ふたり暮らしに対する温度差が描かれる。江里子は、ふたり暮らしの良さを周囲に語るが、ふたりでネタ合わせをしても、バラバラになってしまうし、そのときには今のようなお揃いの衣装も持っていない。それを、劇団時代からの友人に見せるも「いかんせん息があってないわね」と指摘されてしまう。

 美穂は江里子ほどふたり暮らしを喜んでいないように見えるばかりか、朝から晩までずっと江里子と顔を合わせていて、寝てるときまで顔を見るのがつらいと言って、寝るときの布団の向きを変えてしまう。

 これに人知れずショックを受けた江里子は、いつも一緒に出かけているのに、朝、ひとりでアパートを出ていき、仕事場で芸人仲間に誘われた打ち上げを「美穂さん行ってきて」とわざと断り、ひとり中華料理店に向かい、「ふたり暮らしやめようかと思って」と心境を明かす。

 そんなところに「お姉さんがいないとつまらないもの」と打ち上げに行くのをやめた美穂もやってきて、「ふたり暮らしって最高ね」とゲンキンな様子で漏らすのを見て、江里子はほっとするのである。

 ドラマの終わり、ふたりは、おなじみのピンクの衣装を新調し、ネタ合わせで歌を歌うが、その歌はもうバラバラではなかった。

 そして、美穂は今度は牛乳パックのゼリーを作る。今度はそのゼリーは1リットルパックで作られていて、ゼリーを美穂ひとりで食べきってしまうのではなく、江里子とふたりで分け合って食べてドラマは終わる。冒頭のゼリーはわざと500ミリリットルだったとわかって、その脚本の妙に感心してしまった。

 ネタ合わせが後半ではバラバラではなくなり、衣装も揃い、そしてゼリーを分け合う、そんな細かいことのひとつひとつに、姉妹の息がぴったりと合っていくという過程が見えたのだ。

 そして何より、劇団のときからの友人のセリフ「あたしもあたしにとっての江里子や美穂に出会えてたら、人生違ってたかもなって。ふたりを見てると思っちゃうもん」というセリフが印象に残った。お笑いコンビというのは、出会いで人生が変わってしまうものなのは誰もが知るところであるが、このセリフは、芸人の世界だけで終わらず、テレビを見ている人たちにも響くものだったのではないだろうか。

■放送情報
よるドラ『阿佐ヶ谷姉妹の のほほんふたり暮らし』
NHK総合にて、毎週月曜22:45〜23:15放送(全7回)
原作:阿佐ヶ谷姉妹著「阿佐ヶ谷姉妹の のほほんふたり暮らし」
脚本:ふじきみつ彦
音楽:髙城晶平(cero) ・ 王舟
出演:木村多江、安藤玉恵、いしのようこ、中川大輔、楠見薫、山脇辰哉、宇崎竜童、研ナオコほか
制作統括:三鬼一希、櫻井壮一
演出:津田温子、堀内裕介、新田真三、佐藤譲
写真提供=NHK

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