草なぎ剛の“芸能史”が詰まった集大成に 舞台『アルトゥロ・ウイの興隆』での力強い叫び

草なぎ剛がマイクを握り聴衆を熱狂させる

 さて、俳優・草なぎ剛について触れてみたい。かねてからその演技力に高い評価が寄せられてきたのは周知の事実。“憑依型”と称されるその演技力を証明するのが、2020年9月25日公開の映画『ミッドナイトスワン』で演じた凪沙役もその一つだろう。トランスジェンダーの凪沙は、親から愛情を注がれることなく育った少女・一果との出会いを通じて不器用ながらにも賢明に愛を注ぐ。切なくも美しく、繊細な愛の形を表現してみせた。繊細な声、やせ細った凪沙をみせたかと思えば、今回演じるウイは太い声を張り、時にはシャウトし、巧みな言葉で聴衆を熱狂させる。強靭な男性を演じている。

 舞台や映画はもちろん、かねてからテレビドラマでも異彩を放ってきた草なぎ。『僕の生きる道』(2003年/関西テレビ・フジテレビ系)、『僕と彼女と彼女の生きる道/関西テレビ・フジテレビ系』(2004年)、『僕の歩く道』(2006年/関西テレビ・フジテレビ系)は『僕シリーズ3部作』として人気を博したほか、ドラマに映画へと展開した『任侠ヘルパー』(フジテレビ系)での翼彦一役。また復讐ドラマシリーズとして話題を集めた『銭の戦争』(2015年/関西テレビ・フジテレビ系)白石富生役。『嘘の戦争』(2017年/関西テレビ・フジテレビ系)一ノ瀬浩一役では、劇中でもキャラクターを変えるなど、とても同一人物とは思えないほど丁寧に演じてきた。

 11月14日放送のラジオ番組『ShinTsuyo POWER SPLASH』(bayFM)で、舞台について言及した草なぎ。香取慎吾から「『アルトゥロ・ウイ』はどうなんですか? 他の舞台と比べて」と質問を受けると、「もうなんか集大成って感じですね」と草なぎ。劇中には歌も踊りも盛り込まれており、「コンサートをやってきたりとか、そういうのもやっぱりないとできない」と地続きであると返答。続けて「セリフもそうだし、あの悪役とかもいくつかやってきた中での悪い役みたいな感じもある。自分の持ってるものを全て出さないとその役にならないみたいな感じで、ほんと芸能史……僕の、“草なぎ剛”の芸能史が詰まってる感じ」。そしてこう続けた。「若い時はできなかった」と。10代からアイドル、俳優として駆け抜けてきた。47歳を迎えたいま、マイクを握り聴衆を熱狂させるウイが確かに存在している。

■公演情報
『アルトゥロ・ウイの興隆』
2021年11月14日(日)〜12月3日(金)KAAT神奈川芸術劇場<ホール>
2021年12月18日(土)〜12月26日(日)ロームシアター京都 メインホール
2022年1月9日(日)〜1月16日(日)豊洲PIT
出演:草なぎ剛、松尾諭、渡部豪太、中山祐一朗、細見大輔、粟野史浩、関秀人、有川マコト、深沢敦、七瀬なつみ、春海四方、小川ゲン、古木将也、ワタナベケイスケ、チョウヨンホ、林浩太郎、Nami Monroe、FUMI、suzuyaka、神保悟志、小林勝也、榎木孝明
演出:白井晃
音楽・演奏:オーサカ=モノレール

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