草なぎ剛、香取慎吾、稲垣吾郎 NHKドラマで新たな輝きを見せる「新しい地図」

NHKで新たな輝きを見せる「新しい地図」

 例えば、稲垣吾郎といえば、『きれいのくに』であろう。これは挑戦作だった。夫婦の物語かと思って見始めると意外な仕掛けが……。整形が禁止されている世界で人々は何を選択するのか価値観を問う物語。稲垣は誰もが理想とした“トレンド顔”として、父親、教師、映画監督等いろいろな役で登場する。“トレンド顔”役というのはスターである稲垣にぴったりの役割であり、きわめて公的な存在であることで、生々しさを排除して世界と距離をとった存在のようにも見える。そういう俯瞰したまなざしが稲垣は抜群にハマる。『スカーレット』の医者役もそういうところがあったし、特殊能力をもった陰陽師・安倍晴明なんかもまさにそう。こういう役は演じる俳優を選ぶので、稲垣にはますます研ぎ澄ましていってほしいと期待する。

 草なぎは『ペペロンチーノ』のシェフもそうだが生活者が似合う。自身が好きなジーンズのようにその土地で時間をかけて築いてきた轍が見えるような芝居。『青天を衝く』の慶喜は生活感のない将軍ながら、草なぎによって人間味が出て、それが視聴者の心を掴んだように感じる。栄華を誇った徳川家の終焉時に将軍を引き受けることになり陰謀渦巻く幕府の中でサヴァイブせざるを得ない慶喜の悲哀に親しみが湧いた。それでいて和装もう洋装も似合い、スターの風格もあってと絶妙なバランスだった。9月にEテレで放送された新しい地図によるバラエティ『ワルイコあつまれ』の「慎吾ママの部屋」のコーナーで慶喜が慎吾ママとトークするという企画は2021年のベスト番組のひとつと言えるだろう。

 香取は『アノニマス』で5年ぶりに民放の連ドラに主演した。『新選組!』の土方歳三役山本耕史との共演もファンには嬉しいものだった。世の中から背を向けた刑事役は捻くれ者のようで本当は情がある。相反するものが体のうちで混沌としているような人物が香取は似合う。だからこそ舞台「日本の歴史」のように瞬時に何役も演じ分けるようなことも自由自在だ。その「日本の歴史」で演じた義経が「兄上(中井貴一演じる頼朝)に会いたい」と歌う時の切なさもまた彼の真骨頂である。いつまでも失わない純粋性。それが近藤勇にもあったし、今度の山本五十六も公式サイトによると「国民から「英雄」と呼ばれるようになる以前の、海軍という組織の中でもがき続けた、新たな「山本五十六像」に挑みます」とある。香取の最大の魅力のひとつである純粋さが存分に発揮されるのではないだろうか。

 配信作品にいち早く関わり、映画、地上波テレビ、舞台と広く活躍する新しい地図の3人。NHKドラマで彼らの魅力はますます輝く。

■放送情報
大河ドラマ『青天を衝け』
NHK総合にて、毎週日曜20:00~放送
BSプレミアムにて、毎週日曜18:00~放送
BS4Kにて、毎週日曜9:00~放送
出演:吉沢亮、小林薫、和久井映見、村川絵梨、藤野涼子、高良健吾、成海璃子、田辺誠一、満島真之介、岡田健史、橋本愛、平泉成、朝加真由美、竹中直人、渡辺いっけい、津田寛治、草なぎ剛、堤真一、木村佳乃、平田満、玉木宏ほか
作:大森美香
制作統括:菓子浩、福岡利武
演出:黒崎博、村橋直樹、渡辺哲也、田中健二
音楽:佐藤直紀
プロデューサー:板垣麻衣子
広報プロデューサー:藤原敬久
写真提供=NHK

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