『エターナルズ』でも注目　アジア女優として活躍の場を広げるジェンマ・チャンの魅力

次の世代のアジア系の子どもたちのために

　冒頭でも触れたとおり、ジェンマ・チャンは法律家への道を捨てて俳優になった。それは自分の夢のためだけではなく、次世代の子どもたちのためでもあるという。彼女が生まれ育ったイギリスやアメリカなどに生きるアジア系移民の子どもたちは、特定の職業に就くことを期待されがちだ。それは医者やエンジニア、そして法律関係。子どもに安定した生活を望む親世代は、特に不安定な芸術の分野へ進むことに、あまりいい顔をしない。チャンはそこに自分というロールモデルがいれば、演劇を志す若い世代も増えるだろうと考えているという。アジア系が多い典型的な職業以外にも、可能性は広がっているのだと示そうとしているのだ。

　ジェンマ・チャンは、政治的な活動も積極的に行っている。コロナ禍で増加した東アジア系および東南アジア系へのヘイトクライムを止めるため、彼女は仲間とともに募金サイトを設立した。またロックダウン中には、医療従事者に食事を配達するボランティアをしていたという。社会問題に対して高い意識を持っている彼女は、物事を冷静に、深く考え、行動することのできる人物だ。そうした彼女の人間性は、演技にも反映されているのだろう。今後もアジア系俳優の代表として、ますます活躍していくであろう彼女から目が離せない。

■公開情報
『エターナルズ』
全国公開中
監督：クロエ・ジャオ
出演：ジェンマ・チャン、リチャード・マッデン、アンジェリーナ・ジョリー、サルマ・ハエック、マ・ドンソク、キット・ハリントン
配給：ウォルト・ディズニー・ジャパン
(c)Marvel Studios 2021